#星空
下を向いて適当に歩いていたのに、目の端には星空が映る。
何故だろう、と横を向くと自分が歩いていたのは、川に架かる橋の上で、水面に星空が反射していた。
キラキラと輝く星空は風によって揺蕩っていて、ここに飛び込めたらどれだけ楽しいだろうか。
そう思った瞬間、私は橋の上から身を乗り出して、下の星空に飛び込んでいた。
ドボン
ゴポゴポ、ゴポゴポ
川の水はいきなり牙を剥き、私を水底へと引き摺り込む。
抵抗もできず、私はただ引き摺り込まれる。
目を開くと、遙か上空の星空がキラキラと輝いて、私は手を伸ばす。
それすらも意味は無く、私はそのまま意識を手放した。
#神様だけが知っている
なぜ、産まれたのか
なぜ、生きるのか
なぜ、食べるのか
なぜ、寝るのか
なぜ、心があるのか
なぜ、思考するのか
なぜ、死ぬのか
なぜ、私は私なのか
この世界には分からないことが多すぎて、毎日毎日疑問が浮かぶ。
でもそれに答えてくれる人は居ないからひとりで黙々と考える。
きっとこの疑問の答えは神様だけが知っている。
#この道の先に
ある時、見渡す限りの草原の中に立っていた。
いきなりの事なのに疑問すら抱かず、ただこの道の先には何があるのだろう。
きっと何か良い物がある筈だ、と確信めいたものが頭の中の考えを占めた。
そんな考えの元、歩き始めたはいいものの、どこまで行っても草原、草原、草原で民家どころか、山や空すら見えない。
ただ一面が草原で、それ以外は何も無い。
こんなのはおかしい。それに何時間も歩いている筈なのに、疲れも無く、喉の渇きすら感じない。
私はだんだんと怖くなってきた。
何故、いきなり草原の中に立っていたのか。
何故、草原しかないのか。
何故、山や空すらも見当たらないのか。
まず、ここは何処なんだ?
そう思った瞬間、男の体から力が抜けた。
生気が無くなり、血の気が引き、体の至る所から水分が抜け、呼吸はどんどん浅くなり、脈は弱まり、ついには心臓が止まった。
それでもまだ体の変化は終わらない。
目は落ちくぼみ、肋が浮き、骨と皮だけの状態になり、最後には骨すらも塵となり、風に吹かれてどこかへ飛ばされた。
男がどこから来たのか。
何故ここに呼ばれたのか。
それを知るものはどこにも居ない。
#日差し
朝起きるとカーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。
この光を浴びると目がぱっちりと覚めて、さて今日は何をしようかな。と考える。
やらなければならない事を終わらせて、まだ日差しが差し込む時間なら、窓辺に座椅子を持っていき、本を積み、コーヒーを準備する。軽食か、個包装のお菓子もあると尚良いな。
さぁ、久しぶりの休日だ。
残りわずかでも最後まで楽しもうか。
#窓越しに見えるのは
なに黄昏てんだよ。
なんて茶化そうとしたお前の顔は随分と苦しそうで、窓に反射したその顔を見て俺は内心唇の端を吊り上げる。
きっとお前は、俺が窓から最近よく名前を口にするようになった女を見ている、と思っているんだろうけど、本当に俺が見ているのはお前だけなんだよ。
いい加減気付け、ばーか。
まぁ、気付けねぇのも仕方ねぇけどさ。