今日にさよなら
布団をかぶって、目を閉じて、目を開けるといつのまにか朝になる。
月曜日になって火曜日になって水曜日になって、7日過ごすとまた月曜日になる。時計の針も止まることは決してないから毎日新しい日がやって来る。毎日今日を見送っている。
良い日があれば悪い日もある。でもそれでいっか!どうせ新しい日が勝手にやってくるんだから。
今日も、今日にさよなら。
お気に入り
私のお気に入りの場所の一つは、自分の部屋のベッドだ。私にとって、睡眠は生活の中で欠かせないことだからというのもあるかもしれないが、とても気に入っている。私のベッドは二段ベッドの下だ。スッキリ起き上がることはできないが、天井が近くて、秘密基地みたいなその空間が大好きでたまらない。見た目は普通だけれど、寝転んでしまえば、誰でも深い眠りにつくはずだ。
今日もふかふかのベッドで気持ちよく寝たい。
誰よりも
好き。だから、他の人と喋らないで。勉強教えたりしないで、優しくしないで。
一緒に帰ったり、映画を見に行ったり、パンケーキを食べに行ったり、私だけを見て。
私だけを見て、、、欲しかったな。好きだったよ、誰よりも。
10年後の私から届いた手紙
やりたいことがあるなら今のうちに全部やっておきなさい。毎日、なにか違うことをしなさい。帰り道のコースを少し変えたり、本を読んでみたり、ほんのちょっとでいいから違うことをしてみて、時間が過ぎるのが遅く感じるはず。まだ若いんだから食べたいものはたくさん食べておきなさい。
自分の好きなものや好きなことに夢中になればいい、今のうちに。
あなたはいつでもあなたのままでいいの。
「頑張って」なんて、30になった私も嫌いだから、頑張っての反対の言葉、「大丈夫」を送るね。
大丈夫、きっと大丈夫だよ。
バレンタイン
私の好きな人は、いつもクラスの中心にいて、明るくて、優しくて、かっこよくて、本当に素敵な人。それに対して私は、友達が多いわけでもないし、可愛くないし、いつもクラスの端にいる。彼は、クラスの半数の女子が好きだというほどモテモテなのだ。みんなみたいに学校で話しかけることはできないけれど、帰る方向が同じだから帰る時間が合うとたまに話をしている。
たまたま時間が合った今日は、バレンタインだ。彼は、両手で女子からもらったチョコレートなどのお菓子をたくさん持っていた。
「いくつ貰ったかきいていい?」
「ああ、これ?10人ぐらいかなぁ」
もっとありそうな数だったから、10人は絶対に嘘だと思う。「美鈴さんは、誰かにあげた?」
「ううん」
「そうなんだ、、、好きな人とかいないの」
「いるけど、私なんか」
「大丈夫だよ、男子は単純だからあげたらきっと喜んでくれる笑、待ってるんじゃないかな」
「そうかな」
「うん、俺も好きな人がいるんだけど、ホワイトデーに告白しようと思ってるんだ」
「古川くんならうまくいくよ」
「ありがとう、じゃ」
彼はそう言って家の方に走って行った。好きな人いたんだ、私の頭の中は同学年の可愛い女子達の顔が浮かんでいた。
今日はホワイトデー、朝からクラスの女子達がソワソワしている。古川くんからのチョコレートを待っているんだろうな。
古川くんから貰った??
貰ってないー
えーー、誰も貰ってないの?
ショック〜
本命いないんじゃない?
まだ告白してないのかな、女子の会話を聞いてそんなことを考えた。彼にチョコをあげていない私には関係ない話なのに、彼女達の話に聞き耳をたてている自分が嫌になった。誰からももらう予定はないのだから、さっさと帰ろう。教室を出て、校門を出て、家の方にとぼとぼ歩いていると、
「美鈴さーん」
と、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。振り返ると私の方に走ってきたのは古川くんだった。
「良かった、間に合った」
「どうしたの」
「一緒に帰ろうよ。、、、バレンタインの後に好きな人にあげた?今日好きな人からお返しきた?」
私の前を歩いている彼がそう聞いてきた。
「ううん、結局あげてない、ていうか、色々考えたけどあげられなかった」
「そうなんだ」
「古川くんは、告白したの?」
「これから」
「え?これからって、あ!どこかで会う約束してるの?、、、だったら私邪魔だよね」
「美鈴さん、本当に鈍感だよね」
「なにが?」
彼の顔を見ると、真っ直ぐにこちらを見ていた。その瞳が美しくて目が離せない、全身が熱くなっていくのを感じた。
「好きだよ」
「、、、」
「美鈴さんが好きだよ。これ、市販ので申し訳ないけどチョコ。チョコ好き?他のが良かったかな」
彼が少しあわあわしている。私がずっと無言だからだろう。でも、嬉しすぎて声が出ない。彼は私のことが好き?そんなの信じられない。
「美鈴さんの、好きな人教えて」
「私も、、、古川くんが好きだよ」
「やっぱり」
彼は満面の笑みでそう言った。
「美鈴さん、俺と話す時とクラスの人と話す時の表情がちょっと違うから、もしかしたらそうなんじゃないかなって思ってたんだ。つきあってください」
「はい」
私が笑って頷くと、彼は嬉しそうに手を繋いだ。
ベタだけどこういう話好きなんだよなあ。
いつも読んでくださってありがとうございます。