マドレール

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バレンタイン

 私の好きな人は、いつもクラスの中心にいて、明るくて、優しくて、かっこよくて、本当に素敵な人。それに対して私は、友達が多いわけでもないし、可愛くないし、いつもクラスの端にいる。彼は、クラスの半数の女子が好きだというほどモテモテなのだ。みんなみたいに学校で話しかけることはできないけれど、帰る方向が同じだから帰る時間が合うとたまに話をしている。
 たまたま時間が合った今日は、バレンタインだ。彼は、両手で女子からもらったチョコレートなどのお菓子をたくさん持っていた。
「いくつ貰ったかきいていい?」
「ああ、これ?10人ぐらいかなぁ」
もっとありそうな数だったから、10人は絶対に嘘だと思う。「美鈴さんは、誰かにあげた?」
「ううん」
「そうなんだ、、、好きな人とかいないの」
「いるけど、私なんか」
「大丈夫だよ、男子は単純だからあげたらきっと喜んでくれる笑、待ってるんじゃないかな」
「そうかな」
「うん、俺も好きな人がいるんだけど、ホワイトデーに告白しようと思ってるんだ」
「古川くんならうまくいくよ」
「ありがとう、じゃ」
彼はそう言って家の方に走って行った。好きな人いたんだ、私の頭の中は同学年の可愛い女子達の顔が浮かんでいた。


 今日はホワイトデー、朝からクラスの女子達がソワソワしている。古川くんからのチョコレートを待っているんだろうな。

 古川くんから貰った??
 貰ってないー
 えーー、誰も貰ってないの?
 ショック〜
 本命いないんじゃない?

 まだ告白してないのかな、女子の会話を聞いてそんなことを考えた。彼にチョコをあげていない私には関係ない話なのに、彼女達の話に聞き耳をたてている自分が嫌になった。誰からももらう予定はないのだから、さっさと帰ろう。教室を出て、校門を出て、家の方にとぼとぼ歩いていると、
「美鈴さーん」
と、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。振り返ると私の方に走ってきたのは古川くんだった。
「良かった、間に合った」
「どうしたの」
「一緒に帰ろうよ。、、、バレンタインの後に好きな人にあげた?今日好きな人からお返しきた?」
私の前を歩いている彼がそう聞いてきた。
「ううん、結局あげてない、ていうか、色々考えたけどあげられなかった」
「そうなんだ」
「古川くんは、告白したの?」
「これから」
「え?これからって、あ!どこかで会う約束してるの?、、、だったら私邪魔だよね」
「美鈴さん、本当に鈍感だよね」
「なにが?」
彼の顔を見ると、真っ直ぐにこちらを見ていた。その瞳が美しくて目が離せない、全身が熱くなっていくのを感じた。
「好きだよ」
「、、、」
「美鈴さんが好きだよ。これ、市販ので申し訳ないけどチョコ。チョコ好き?他のが良かったかな」
彼が少しあわあわしている。私がずっと無言だからだろう。でも、嬉しすぎて声が出ない。彼は私のことが好き?そんなの信じられない。
「美鈴さんの、好きな人教えて」
「私も、、、古川くんが好きだよ」
「やっぱり」
彼は満面の笑みでそう言った。
「美鈴さん、俺と話す時とクラスの人と話す時の表情がちょっと違うから、もしかしたらそうなんじゃないかなって思ってたんだ。つきあってください」
「はい」
私が笑って頷くと、彼は嬉しそうに手を繋いだ。


        
        ベタだけどこういう話好きなんだよなあ。
     いつも読んでくださってありがとうございます。

2/14/2024, 11:54:26 AM