幸せとか、そんなものは知らないし、必要もないと思っていた。
ずっと独りでいた。孤独が好きだと思っていたから。
誰かと一緒なんて、鬱陶しくて、面倒臭い。そして、そんなものを敢えて好む奴とか。
俺には理解なんて出来なかった。
ある晴れた日だったと思う。
誰かが、隣に座った。楽しそうに、話し掛けてきた。
誰だよ。こんな風に話し掛けてきて。
俺は、望んでいないのに。
「怖いの?」
唐突にそいつが言う。俺を見て、微笑んで。
怖い?
何が怖い? 何で怖い?
俺が何を恐れているって言うんだ。
「本当は、独りが怖いくせに」
――違う。
俺の戸惑いなと気にせず、そいつはそのまま続ける。
「いつか訪れる別れを恐れているんでしょ? 最初から出逢わない方がいいって。そう思っているんでしょ? だから、独りがいいって思い込んでいる」
――恐れ?
一緒にいる事で、人の温もりを知ってしまって。
でも、いつか必ずやって来る別れを。
俺は――。
――いや、本当は知っていた。
本当は孤独が好きなんかじゃなくて、本当は孤独を恐れていた。
だからこそ、敢えて孤独でいたんだ。
「恐れる必要はないよ。別れの代わりに、また、新たな出逢いが待っている筈だから。今、この時のように」
そしてそれから。
孤独が好きじゃない俺の隣に、幸せを知らなかった俺の隣に。
そいつはずっと変わらず、座っている。
孤独の代わりに幸せを運んできてくれた。
幸せとは何かを教えてくれた。
『幸せとは』
星が少なくなった夜空を見上げる。
いくら今年のしぶんぎ座流星群の極大が朝方6時頃とはいえ、起きるのが遅過ぎた。そりゃ空も白み始める。
それでも今年は多かったのか、はたまた運が良かったのか。
このギリギリの空でも流れ星を観測することができた。
できればもう一つ、あと一つ、と。欲張るうちに夜は明け、太陽が顔を覗かせた。日の出だ。
そういえば、日が出る瞬間をまだ今年は拝んでいなかったな。私にとっての初日の出だ。
今年もよろしくお願いします。
『日の出』
「年が明けたな。今年の抱負は?」
「そうだなぁ……」
顎に手を当てて少し考える。
「まぁ……生き延びる。かな……?」
「おいおいやめろよ、そういうの」
「そうは言っても、切実な思いで強い決意だ」
「でもそう言うのって――所謂死亡フラグだぞ?」
すぐ隣に手榴弾が投げ込まれ爆破した。
命からがら逃げ出して、なんとか今日も生き延びた。
「今年どころか、今日を生き延びるのだって必死だよ」
戦場のど真ん中で呟く。
来年のことを言えば鬼が笑うって言うけど、来年まで生き延びられていたら、それは奇跡だ。
だから、今年の抱負は、生き延びる。これからもずっと、こんな日々が終わるまで心に抱き続ける願いだ。
『今年の抱負』
新年あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします
そこで筆が止まる。
これ以上何を書けばいいんだ~!?
だから年賀状は嫌いなんだ! もう書くことなんてないよ! 特に職場の人なんて、社交辞令しかないじゃん。
もう書きたくない……。そうか、流行りの年賀状じまいをすればいいのか。「終わりにします」って書くか。……いいのかな? 急にそんなこと書いても。
結局悩みに悩んで、また年末ギリギリになって、無難なことだけ書いて投函する。毎年の繰り返し。
そして年が明けて、出してなかった人から年賀状が届いて、慌てて追加で書くまでがセット。
『新年』
カウントダウンが始まる。
隣にいる君に声を掛ける。「良いお年を!」
そして「ゼロ!」の合図と共に年が変わる。
続けて僕は言う。「あけましておめでとう! 今年もよろしくね」
『良いお年を』