川柳えむ

Open App
12/31/2025, 4:59:42 AM

 夜空を見上げると、満天の星が僕らを見守っている。
 まるで落ちてきそうなほどに雄大で、少し怖くもなる。
 ふと振り返ると、君が星と同じくらい目を輝かせて、空を見上げている。

 除夜の鐘が鳴り響く。
 時計の針が0時を指す。
 それと同時に、見上げていた夜空に花火が打ち上がる。

 君がこちらを振り返って笑った。
「今年もよろしく」


『星に包まれて』

12/30/2025, 9:41:12 AM

 意識が薄れ、途切れていく。
 周囲が何か騒いでいるような気がするけど、もうわからない。
 たぶん、本当は大声で何か言い合っている。自分に声を掛けてくれている。
 でも、もう何もわからない。
 うるさいはずの現場で、それでも静かになっていく。全てが溶けていくように。
 そうしてとうとう、意識を手放した。


『静かな終わり』

12/29/2025, 9:59:17 AM

 狭い狭い箱の中。ただひたすらに揺られている。
 何も見たくないと、何も聞きたくないと。
 身動きが取れない狭い空間に、時折覗くのは、隙間から射し込む陽の光。
 こんなにも身動きが取れなくなったのは、いつからだったろう。遠い昔だったような気もするし、つい最近だった気もする。
 私の旅路はとても視界が開けていて、広く長く続く道とそれを照らす光が存在していた。見えない明日に心を弾ませて。たまに怯えることもあったけれど。
 それなのに、いつからか、この箱の中に閉じ込められていた。明日も何も、わからなくなっていた。

 箱が大きく揺れた。
 ここは、外の様子が見えなくて、怖い。

 出して。いや、出さないで。

 箱の薄い壁を掻き毟る。
 その壁は、本当にそこにあるのかさえもよく分からない。

 私は、何処へ向かおうとしているのだろう?
 私は、何に捉えられているのだろう?

 暗闇に包まれた箱の中。
 壁を掻き毟るのをやめ、静かに目を閉じると、更なる暗闇が襲ってくる。
 このまま暗闇に身を投じて、何も知らないままでいれば、もう傷付くこともないのだろうか?
 それならばきっと、この箱は、私の心を護る唯一の殻だから。
 この箱の向こう側のことなんて、もう知らないままで、このままで――。
 勝手に何処かへ運ばれて、勝手に何処かへ辿り着く。そんな旅路で構わない。

 再び箱が大きく揺れて、突然高く放り出された。
 ひっくり返って体をしこたま打ち付ける。
 蓋を開ける勇気はない。
 死ぬのなら、このまま何も知らないまま死にたい。
 そう思うのに、箱の蓋が、誰かの手によって開けられようとしていた。
 怯えた私は、その腕を力いっぱい掴んだ。
 それでもその腕の力には敵わなくて、蓋は開けられてしまった。

 暗闇ばかり目が慣れていた私には、一瞬、眩し過ぎて分からなかった。

 開いた箱の外側。
 最初に目に入ったそれは――遠くて高い、青い空だったんだ。


『心の旅路』

12/28/2025, 8:09:36 AM

「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰だ?」
「それは女王様でございます」
 いつもの質問。いつもの解答。
 女王はこの答え以外は求めていない。この答え以外を発することは許されない。
 真実を映せない鏡はどんどん凍っていく。
 本当は、世界で一番美しい人は身近に別にいた。
 知っていて、それでも語ることはできなかった。

「あら、美しい鏡ね」
 ある日、その美しい人が、部屋に入って鏡を見つけた。
「少し曇っているわね」
 その美しい人は、自分の服の袖で鏡を磨いた。
 白く曇っていた鏡は輝きを取り戻し、凍っていた心は溶けていくように感じた。
「これでよし」
 美しい人が笑う。
 もう噓は吐けなかった。

「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰だ?」
「それは――」
 温かさを知る鏡は曇りなく、真実を映し出す。


『凍てつく鏡』

12/27/2025, 1:20:24 AM

 しんしんと雪が降り積もる。
 夜も更けて辺りは暗いのに、カーテンを開けると、雪が部屋の灯りを反射して、辺りが輝いた。
 静かだなぁ……。そして窓から伝わる冷気が寒いな……。
 もう寝よう。暖かい部屋で、猫を抱きかかえて。


『雪明かりの夜』

Next