月が綺麗で、君を思い浮かべながら眺めていた。
優しい光が、僕を包み込む。それはまるで君のようだなと思って。
ねぇ、君は今どうしているかな?
君のことを考えるだけで、僕は幸せだよ。
上手く写らないけど、写真を撮って、君に送った。「月が綺麗ですね」って。
『moonlight』
今日だけ許して。また明日から頑張るから。
そう思いながら。
食べる。食べる。たくさん食べる。
もうそれは満腹を超えるくらいに。
嫌だ。
もう食べたくないよ。無理に食べさせないで。
今日だけでも、どうか許して。
『今日だけ許して』
誰か……誰か、助けてほしい。
いや、マジで。
昔治療した歯の奥の方が膿んで、痛みと共に顔が腫れ上がりました。まるでこぶとり爺さん。
若干熱もあるし、しんどい。それなのに仕事はある。
治療してもらってるけど、まだ痛いしブサイクだし、最悪。
助けてー!
この痛みと腫れをどうにかしてくれー!
『誰か』
足音が遠くから響いてくる。
――ついてきている?
こちらが足を止めると、向こうの足音もぴたりと止む。
怖くなって全速力で逃げる。
息を切らして走る。
しかし、一向に果てが見えない。一本道の通路がずっと続いている。
いつの間にこんなところに迷い込んだのだろう?
足音が少しずつ近付いてくる。もう逃げられる気がしない。
意を決して、後ろを振り返った。
視界の奥の方で、同様に後ろを振り返る自分の姿が見えた。
『遠い足音』
昔、秋の精を見たことがある。
その子が秋の精だという確信があるわけではない。しかし、そうとしか思えなかった。
その姿を見たのは一瞬だったが、こちらの視線に気付くと、すぐに姿を消してしまった。そして、冬が訪れた。
その残像が忘れられなくて、ただひたすらに再び秋が訪れるのを待っていた。
ようやく、空気全体が色づき始めたように涼しくなり、待ち望んだ秋の気配が濃くなってきた。
もしかしたら、また会えるんじゃないかと、以前出会った場所へと赴いた。
そこで姿を探してみたが、見つからなかった。
それはそうか。警戒されているのかもしれない。
残念な気持ちになって、空を見上げる。
すると、視線の先から、一枚の葉がひらひらと舞い降りてきた。
それを手にする。見事に赤く染まった紅葉の葉だった。
まるでそれが君からの贈り物のようで、ポケットに大事に仕舞った。
『秋の訪れ』