素足になって砂浜の上を駆ける。
熱い砂に飛び上がり、笑い、そのまま海の中へと足を伸ばす。
丁度よい水温は、火照った足の裏を、足首を、ふくらはぎを冷やしてくれる。
気持ち良い。
日射しは暑いが、このままぼーっとしていたい。
もうすぐでこの休暇も終わる。
また心を厚く装って、作り物の笑顔を浮かべる日々が始まる。
素足のままではいられない。
だから、終わりまで。もう少しだけ。
何も装わず、このままで。
『素足のままで』
あと少し、もう少しなんだ。
目の前に見えているのに届かない。
もう一歩だけ、それで、辿り着くのに。
もう、歩けない……。
水が欲しい。オアシスは目の前にあるのに、届かない。
もう一歩が、どうしても足りない。
そのまま意識は遠退いて。
オアシスが本当に存在していたのか、それとも蜃気楼だったのか。それすらもわからぬままに。
『もう一歩だけ、』
見知らぬ街に辿り着いた。
やって来ようと思って来たわけじゃない。偶然だ。
でも、見慣れない街は新鮮で、ちょっとそこのお店に入ってみようか。なんて思ったりして。
――そんな場合じゃないんですけど。
通勤電車で寝過ごしちゃって、気付けば知らない駅にいて。でも、もうこうなったら、開き直りですよね……。
『見知らぬ街』
夜景を撮ろうと、高いビルの上でカメラを構えた。
雨が降っていて、コンディションは最悪だが、これはこれで味があるというもの。
シャッターを何度も押す。
良い一枚が撮れたと思った瞬間、視界の先に一筋の稲妻が見えた。辺りが明るく照らされ、大きな音が響く。
遠くで雷が鳴っていることは気付いていた。
タイミングがあと少し違えば、稲妻が走る瞬間が捉えられたのに!
その後、頑張ってその瞬間を撮ろうと待ってみたものの、全然タイミングが合わず。遠くの雷はいつしか消えていってしまったのだった……。
『遠雷』
深い闇の色をした海に、深夜、一人沈んでいく。
どこまでも深く深く、奥底まで。
水の中に、溶けていく。
――助けてくれ!
慌てて飛び起きると、あの海と同じ色をした布団に、まるで小さな海のような水たまりができていた……。
『Midnight Blue』