こういうお題になった瞬間に晴れるのどういうこと?
でも書くだけ書いてみよう。
えー……。
朝から雨が降って――
……降ってないんだよなぁ。
気持ちが乗らない。
雨音にも包まれていない。
青空からは強い日射し。日射しが熱くて暑い。
暑過ぎて、少しだけ、雨が恋しくなった。
『雨音に包まれて』
茨に囲まれた城がありました。
そこにいる人々はすべて、呪いによって眠りについていました。
そのお城の一番上等な部屋に、それはそれは美しいお姫様が眠っておりました。
この城の噂を聞きつけ、お姫様の姿を一目見てみたいと、隣国の王子様がやって来ました。
「なんて美しい人なんだ」
王子様はお姫様を見て、あまりの美しさにキスをしました。
すると、なんとお姫様が目を覚ましたではありませんか。
そして状況を理解すると、お姫様は叫びました。
「……変態! セクハラ!」
「えぇ!? ここは『あなたの愛が目を覚ましてくれたのね』って喜ぶところじゃないのかい!?」
「人工呼吸なら人助けだけど、美しいって理由だけで欲望のままにした一方的なキスは犯罪です。ちゃんと同意求めないと駄目です」
「えぇぇぇ!?」
いやたしかに人助けしようとしてキスしたわけじゃないけど! 欲望のままにしたかもしれないけど! でもほら少女漫画でもあるじゃん、寝てるところに思わずキスしちゃうやつ! 大体呪いで寝てるところをどうやって同意求めろと! むしろこういうシチュエーションのキスって、人工呼吸と同じで、人助けじゃない?
お姫様の叫び声を聞きつけ、丁度目を覚ました城の人達が部屋に駆けつけました。
そうして、王子様は捕まり、隣国との関係は拗れに拗れたそうな。
めでたくなしめでたくなし。
『美しい』
どうして。どうして私がこの世界のヒロインのはずなのに。どうして上手くいかないの。どうして誰も私の方を見ないの。
この世界は乙女ゲームの世界。
そんな世界にヒロインとして転生した私。
だから、この世界は私の為にあるようなものなのに。
どうして誰にも愛されないの? 私はヒロインよ?
あぁ、でも、そうか。悪役令嬢も転生者で、悪役令嬢が愛される物語もよくあるから。私は所詮当て馬ってこと? 許せない。
私の為の世界のはずだったのに、あの人のせいで何もかも上手くいかない。
じゃあ、どうにかしてあの人を陥れないと。
そう思い、その為の罠を幾日もかけて、綿密に計画を立ててきた。
それなのに、結局それも阻止されて。どこまでいってもこの世界は悪役令嬢の味方だった。
私の為じゃない。あの人の為の世界だった。
『どうしてこの世界は』
昔、この道を君と歩いたな。
くだらないことを喋りながら、笑いながら。
なつかし……いや、何この道!? 知らん知らん!
いつの間にこんなところに道が接続されている!? 知らないお店もあるし、あの店はなくなってるし!
君と歩いたこの道も、今はもう知らない道。
あの道は、今はもう記憶の中にしか存在しない。
『君と歩いた道』
いじめられていた女の子を、王子様が迎えに来る話。眠ってしまったお姫様を、王子様がキスで目覚めさせる話……童話が好きだった少女は、きっと私にもいつか王子様が迎えに来るに違いないと、信じていた。
周りはどんどん結婚していく。気付けば、少女はもう少女ではなくなっていた。
それでも信じていた。いつか王子様が迎えに来ることを。
でも、なぜなかなか来ないのだろう?
そして気付いた。
そうだ。私はいじめられてもいないし、長い眠りに就いてもいない。
そこから、自分がいじめられるように振る舞った。他人の感情を逆撫でするように、人に迫る。
いい大人になったみんなはなかなか手を出してこなかった。しかし、とうとう痺れを切らした一人の女が、彼女のことを激しく叩いた。
あぁ、いじめられた。これできっと、ここから救い出してくれる王子様が現れる。
でも、まだ足りない。きっと長い眠りが足りていない。だから、睡眠薬をたくさん飲んだ。たくさん。たくさん。
これで、王子様がやって来て、キスで目覚めさせてくれるはず。楽しみね。
翌日、自殺と処理された。人に叩かれたのがショックだったのかもしれないと。
しかし、彼女の顔は、どこか嬉しそうに笑っていた。
『夢見る少女のように』