いじめられていた女の子を、王子様が迎えに来る話。眠ってしまったお姫様を、王子様がキスで目覚めさせる話……童話が好きだった少女は、きっと私にもいつか王子様が迎えに来るに違いないと、信じていた。
周りはどんどん結婚していく。気付けば、少女はもう少女ではなくなっていた。
それでも信じていた。いつか王子様が迎えに来ることを。
でも、なぜなかなか来ないのだろう?
そして気付いた。
そうだ。私はいじめられてもいないし、長い眠りに就いてもいない。
そこから、自分がいじめられるように振る舞った。他人の感情を逆撫でするように、人に迫る。
いい大人になったみんなはなかなか手を出してこなかった。しかし、とうとう痺れを切らした一人の女が、彼女のことを激しく叩いた。
あぁ、いじめられた。これできっと、ここから救い出してくれる王子様が現れる。
でも、まだ足りない。きっと長い眠りが足りていない。だから、睡眠薬をたくさん飲んだ。たくさん。たくさん。
これで、王子様がやって来て、キスで目覚めさせてくれるはず。楽しみね。
翌日、自殺と処理された。人に叩かれたのがショックだったのかもしれないと。
しかし、彼女の顔は、どこか嬉しそうに笑っていた。
『夢見る少女のように』
6/8/2025, 3:12:48 AM