川柳えむ

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5/27/2025, 10:29:24 PM

「これで最後です!」
「えー!?」
「アンコール!」
「じゃああともう一曲だけ……」

「では、これで最後です!」
「えー!?」
「アンコール!」
「そんなにぃ? じゃあ今度こそ次で最後ね?」

「今度こそ、これで最後です!」
「えー!?」
「アンコール!」
「じゃあ……」

 後ろからマネージャーが現れた。
 いい加減にしろと怒られた。


『これで最後』

5/26/2025, 10:44:33 PM

 始まりがそもそも少しおかしかった。
 記憶はないが、朝一緒のベッドにいた。あるだろ? それくらい。
 とりあえず好みだったので付き合った。

 そこで一つ問題ができた。
 ……彼女の名前がわからない。
 完全に訊くタイミングを逃してしまった。
 向こうはこちらの名前をちゃんと認識しているし、今更訊けない。困った。
 だから、彼女宛の郵便物をこっそり見た。
 ――『鈴木 瑠璃』。
 すずき るり!
 これが彼女の名前。ようやく知ることができた。
 そして、とうとう彼女を名前で呼んだ。

 ……怒られた。
「『るり』って誰?」と――。
 どうやら『瑠璃』と書いて『らぴす』と読むらしい。
 わ、わかるかぁー!
 浮気を疑われるし(いや読み間違いって気付いてほしい)、そもそも名前を覚えていなかったのかと怒られるし(それはそう)、最悪だ。
 もっと読みやすい名前をお願いします……。


『君の名前を呼んだ日』

5/25/2025, 10:27:17 PM

 空が灰色に染まっている。そこから、涙がぽたぽたと零れている。温かく、柔らかな風と共に地面へと落ちていく。
 その音がやさしい音楽のように聴こえる。
 昔はこんな日なんて嫌いだった。暗くて、心まで沈んでいきそうで。
 あの日は、適当に音楽を流していた。なんでも良かった。何か心が晴れるなら。
 その中に、あの曲があった。
 明るい曲ではなかった。まさしく今の状況を歌っているような、そんな歌。でも、優しいメロディーだった。
 その歌を雨音と共に聴いていたら、なんだか雨の日もまとめて好きになってしまったんだ。
 それから、こんな雨の日には、あの音楽が頭の中に、雨音と共に聴こえてくるようになった。心地良い気分だ。 


『やさしい雨音』

5/25/2025, 7:18:32 AM

 魔王を倒す旅を続けるパーティーがあった。
 その中に、歌が下手な吟遊詩人がいた。その歌声は敵だけでなく仲間の耳も壊すほど。
 しかし、本人はその事実に気付いていないのだった――。

「思ったんだけど、私って、歌だけじゃなく、魔法が使える吟遊詩人じゃないですか」
「うん」
「なので、魔法と歌を融合させたら、どちらの効果も発揮できるのではないかと!」
「殺傷能力が上がるな」
「え?」

 そんなわけで、吟遊詩人は練習を始めた。
 仲間はその様子を眺めている。
「……なんか思ったよりダメージ来ないな。一応耳栓用意しといたけど、まさか必要なくなるとは」
「歌聴いても平気ですね。というか、歌が聴けるレベルになってる」
「とうとう音痴を克服したのか? マジで!?」

 吟遊詩人が練習を止め、こちらへとやって来た。
「いやー魔法に集中しちゃって音程取れなくてだめだわー」
「音……程…………っ!?」


『歌』

5/23/2025, 10:18:54 PM

 そう、そっと優しく、包み込んで。
 全てを受け入れようとしなくていい。
 少しでいい。溢れ出ないように、ぎゅっと。
 そうしたら、燃えるくらいに熱して。

 はい! 最高の餃子の出来上がり!


『そっと包み込んで』

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