川柳えむ

Open App

 魔王を倒す旅を続けるパーティーがあった。
 その中に、歌が下手な吟遊詩人がいた。その歌声は敵だけでなく仲間の耳も壊すほど。
 しかし、本人はその事実に気付いていないのだった――。

「思ったんだけど、私って、歌だけじゃなく、魔法が使える吟遊詩人じゃないですか」
「うん」
「なので、魔法と歌を融合させたら、どちらの効果も発揮できるのではないかと!」
「殺傷能力が上がるな」
「え?」

 そんなわけで、吟遊詩人は練習を始めた。
 仲間はその様子を眺めている。
「……なんか思ったよりダメージ来ないな。一応耳栓用意しといたけど、まさか必要なくなるとは」
「歌聴いても平気ですね。というか、歌が聴けるレベルになってる」
「とうとう音痴を克服したのか? マジで!?」

 吟遊詩人が練習を止め、こちらへとやって来た。
「いやー魔法に集中しちゃって音程取れなくてだめだわー」
「音……程…………っ!?」


『歌』

5/25/2025, 7:18:32 AM