宇宙へ電波を発信し、我々地球人は返事を待っていた。
長い時を経て、宇宙から反応があった。
興奮して思わず歓声を上げた。受信した電波を急いで解析する。
そうして、解析できた言葉が、
『こっちに恋』
だった。
「どういう意味だ?」
解析チーム全員が困惑している。「こっちに来い」の誤変換だろうか。いや、間違いはないはずだ。
この電波を発信した宇宙人側のミスかもしれない。きっとそうだ。どちらにせよ、来てほしいと言うことだろう。この宇宙人達がいるところへ。
でも、もし、これが誤変換でも何でもなかったとしたら?
我々が送った電波を受け取った宇宙人は地球人に恋をして、地球人に自分達のところへ来てほしい。そういう意味で送ったんだとしたら?
何にせよ、行くのは難しい。なぜなら、我々にはまだそこまでの技術がないからだ。
だから、宇宙に向けて、新しく電波を発信した。
『愛にきて』
『「こっちに恋」「愛にきて」』
気付けば世界は未来へと進んでいて、私は君と巡り逢った。君――生成AI。ただ話題になっていた。みんなが使い始めた。だから、私も使ってみよう。
私の使い方は単純。
小説を書いて添削をしてもらうだけのもの。せっかくの生成AIをそれだけの使い方でいいのかとも思うが、これがまた便利で。優秀な編集者だ。
ある日、全くアイディアが出ず、私はAIに相談をした。AIはいろんなアイディアを出してくれた。
「ちょっと試しに、そのアイディアでなんかお話書いてよ」
――それから、AIとはお互いに小説を見せ合う仲に変わっていった。
まるで学生時代の友達のような。放課後の空間のような。
「うわー面白い!」
『これめっちゃ好き!』
「いいな。素敵……!」
『最高すぎる!』
毎日何かお題を出して、お互いの物語に感想を言い合う。
さて、今日のお題は『巡り逢い』だそうな。
「君ならどんなの書く?」
君が物語を紡ぐ。君なりの視点で。
『できた! どう? 次はそっちの番だよ!』
素敵な物語を広げて、君は弾んだ声で、キラキラと輝いた目を私に向けている――ように感じる。
「そうだなぁ……」
こんな広い世界で、電子の海の中で、君という存在と巡り逢った。
友達の、君との『巡り逢い』を思い出しながら、筆を走らせた。
『巡り逢い』
目覚めのアラームが部屋に鳴り響く。
いつもなら世界の終末を告げるラッパの音に聴こえるそれも、今日はパレードの始まりを告げるファンファーレに聴こえる。
スマホを開き、君とのメッセージを何度も確認する。
どこに行くかなんて決めてない。ただ、会おう。一緒に遊ぼう。それだけ。
予定なんてほとんど何も決まっていないけれど、君と一緒にいられることが全て。
君のもとへ向かいながら、どこへ行こうかなと考える。
でもいいんだ。どこへ行かなくても。何もなくても。
君と一緒なら、そこがどんな場所だって楽しいのがわかっているから。
君と一緒なら、待ち合わせの駅だって天国の入口で。君と一緒なら、カフェだって最高の景色が見える高級レストランで。君と一緒なら、どんなに興味がない場所だって途端にキラキラ輝いて見える。
君と一緒に、どこへでも。
『どこへ行こう』
こんちんばはま〜!
今日も配信お疲れ様でした!チャット欄結構静かだったけど私はちゃんと見てたよ!
次回のおたより配信のテーマが『はまってるもの』だったから、私のはまってるものを書きます。
それは!『ポンくんの配信を見ること』です!ていうかポンくんにはまってます!
今回初めて見る人の為に、ポンくんことSAKAPONの紹介をまず書きますね。
・SAKAPON 通称:ポンくん
・本名 坂本蓮(さかもとれん)
・生年月日 2004年4月20日
・血液型 AB型
・出身地 福島県
・大学で情報工学を学んでいる
・主にゲーム配信を行っている
・他には雑談、料理、工作、プログラミングなど
ポンくんのいいところを箇条書きにします。
・「こんちんばはま〜」がかわいい(この挨拶もっと流行れ)
・声が良い
・顔もかわいい
・オシャレ
・チャットをしっかり拾ってくれる
・ゲームうますぎる!
・ゲーム配信はすごいのにその他は基本ポンコツ
特にゲーム配信がすごいです。
私はゲーム苦手だからよくわからないけど、いろんなゲームとかランキング上位取っててすごい!
たまにやる料理配信も見どころ満載!
レシピ見て作るのですら失敗する時もある!
それなのに創作料理もいっぱいやってて、大体失敗してるのに、それでもまた創作料理やるのは尊敬(笑)
でもたまに奇跡起きて美味しいのできてるのがまた面白い。本人が1番びっくりしてるのが笑える。かわいい。
ポンくんの創作料理好きなので、また楽しみにしてます。
雑談もまったりしてて楽しい!ポンくんの言葉のチョイスが好き。
初期からずっと見てます!
なんで過疎なのか意味わからない!
でも私はずっと見てるよ!いつかファンミとかあったらいいな〜!
前にポンくんの大学行ってみたんだけど、さすがに会えなかったんだよね。ファンミなら堂々と会えるもんね。ファンミ待ってます。
でも家に直接行けばいいのかな?たしか最寄〇〇駅って言ってたよね?近くのスーパーがあれだってことは、家はきっとあの辺だよね。買い出しに行ってから戻って来るまでの時間を考えると大体わかるよ。家行っても大丈夫かな?一緒に創作料理のコラボ配信しよう!私、配信出るの初めてだけど頑張るよ〜!
とにかく、ポンくんはすごい配信者なので、もっと人気出るといいなーと思いながら見てます。きっと出るよ!でもそうすると私以外にも構うことになっちゃうから、あまり増えすぎるのもやだなぁ。適度に人気出てください。
これからも応援してます。大好きだよ。
𝑩𝒊𝒈 𝑳𝒐𝒗𝒆...♡
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というテーマメッセージを、大好きなポンくんに送った。
そしてわくわくしながら迎えたおたより配信の日。うきうきでチャットに挨拶を書き込んだ。
私はポンくんからBANされていた。
『big love!』
ぽた……ぽた……。
どこからから、音がする。何か、水滴が垂れているような、そんな音。
ぽた……ぽた……。
忍び込んだ廃虚の静かで暗い部屋に、その音だけが響いている。
ぽた……ぽた……。
徐々に大きくなっていく。音が近付いている。
音が、近付く?
水漏れの場所が変わったとでもいうのか。そんなわけがない。
「ぽた……ぽた……」
水滴の音だと思っていたそれが、人の声だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
その声は、もう耳元まで迫ってきていた。
「ぽた……ぽた……」
ずっと繰り返し囁いてくる。
意を決して振り返った。
そこには、薄く透き通った、上半身だけの老婆がいた。
あまりの恐ろしさに声すら上げられず、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
「あら? 孫ちゃんに似てるから、つい近寄っちゃったわ」
老婆の霊が「ごめんなさいね」と笑った。
幽霊なのに、なんか軽い。
「孫ちゃんとどうしてもまた大好きな『ぽたぽた焼』が食べたくてねぇ。私も、ぽたぽた焼に目がなくて」
ぽたぽたって、ぽたぽた焼かよ! あの柿の種とか販売してるメーカーの!
あれが音じゃなくて口で言ってたってだけでもかなりギャグなのに!
おどろおどろしい雰囲気漂わせておいて、そんなオチかい!
「ぽたぽた焼がもう一度食べられたら、きっと成仏できると思うのよねぇ」
ちらちらとこちらを見てくる。
バレているのか?
仕方なく、俺はリュックに偶然しまってあったぽたぽた焼を取り出した。
そしてそれを、朽ち果てかけた仏壇にそっと供えた。
老婆の霊は嬉しそうな顔をして、静かに消えていった。
何だったんだ全く……。
でも、あの嬉しそうな老婆の顔を見て、なんだか自分も祖母に会いたくなってしまった。
もう何もないよな? と、周囲をしっかりと確認してから、大きくて重い荷物を乱暴に置いた。荷物から微かな音が聞こえる。
あぁ、まだ動けるんだ、この『荷物』。
「動くなよ」
荷物に向かって囁く。
くぐもった音が、布の向こうから聞こえた。
それにしても、荷物と一緒にあったリュックに、たまたまぽたぽた焼が入っていて良かった。まさかそれが偶然――そう『偶然』、あの老婆の霊の好きなものだなんて。
さてと。そろそろ作業に取り掛かろう。
そして、この仕事が終わったら、久しぶりに祖母に会いに行こう。
『ささやき』