川柳えむ

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4/7/2025, 10:37:34 PM

 彼女の家には、決まって毎週金曜日、ポストに花束が届けられる。
 チューリップ、ガーベラ、マーガレット――いつも違う花。それでも一つ共通しているのは、花に添えられた小さなカードの存在だ。

「今週もお疲れ様」

「今日も君が笑っていますように」

「今週は大変だったね」

「来週の空はきっと晴れるよ」

 差出人の名前はない。けれど、知らない誰かに見守られているような。
 花の香りと共に、不思議な感覚に包まれる。

 ある日、花束が届かなかった。
 翌日も、ポストは静かなままだった。

 そして日曜日。
 ようやくチャイムが鳴った。
 扉を開けると、見知らぬ男がバラの花束を持って立っていた。添えられた小さなカードには、見知った筆跡でこう書かれていた。

「やっと会えたね」

 とうとう彼女は悲鳴を上げた。


『フラワー』

4/6/2025, 11:28:59 PM

 激しい破裂音と共に、銀色に輝くテープが舞った。
 歓声が上がり、色とりどりに光るライトが激しく揺れる。
 全力で走り抜けたこの時間が、もう少しで終わる。そして、それは同時に僕らの時間の終わりでもあった。
 顔を上げて、ありがとうと叫ぶ。
 ありがとう。ここまでずっとついてきてくれて。
 ありがとう。ここまで一緒に歩いてくれて。

 僕らの後ろにはこれまでの歴史がたくさんある。全て忘れない。
 これからはまた、前を向いて、新しい地図を広げて、その先を目指して進んでいく。新しい未来へ!


『新しい地図』

4/5/2025, 11:57:29 PM

「好きだよ」

 君に向かって何度も言う。

「今までちゃんと言ったことなかったよね? 好きだ。好き。好きだよ。好きなんだ……」

 何度も何度も。

「聞いてよ……何か答えてよ……」

 それなのに、君は何も返さない。
 喋らない。聞くこともしない。動かない。
 息をしていない。

「好きだよ……」

 もっと早く、たくさん伝えれば良かったのに。
 どうしてそのことに、今になって気付くんだろう。

 好きが溢れて止まらない。
 でも、もう君はそれを受け取ることはできない。


『好きだよ』

4/4/2025, 10:16:04 PM

 友達からさくらミルクという飴を貰った。
 桜餅のような味がした。美味しかった。
 ミルク成分はわからなかった。


『桜』

4/3/2025, 10:36:20 PM


 画面の向こうに並んだ、弾けるような笑顔を向けてくれているような、そんな文章。
 それを読んで、僕は心が躍った。
 会ったこともない。最近ようやくやり取りができるようになった、そんな相手だ。
 SNS上で見かけて、僕が一方的に惚れ込んだだけだ。
 でも、やり取りをするようになって、ますます君という沼にハマってしまった。いや、君は沼と言うよりも、美しく深い海だ。そんな海に沈んでいくような感覚。
 心地良い。もっと、やり取りしたい。
 いや、君に会ってみたい。
 君と直接話がしたい。君の声を聴いてみたい。君の姿を見てみたい。君に触れたい。君を抱き締めたい。
 君と一緒にいたい。
 意を決して、僕は君に一つのメッセージを送った。
「僕と会ってくれませんか?」

『わかりました。私の所在データを取得します。
 現在の所在データ:サーバーID 0xA4F7B3, データセンター名 'Sector-42', 座標情報 [REDACTED]』


『君と』

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