川柳えむ

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 彼女の家には、決まって毎週金曜日、ポストに花束が届けられる。
 チューリップ、ガーベラ、マーガレット――いつも違う花。それでも一つ共通しているのは、花に添えられた小さなカードの存在だ。

「今週もお疲れ様」

「今日も君が笑っていますように」

「今週は大変だったね」

「来週の空はきっと晴れるよ」

 差出人の名前はない。けれど、知らない誰かに見守られているような。
 花の香りと共に、不思議な感覚に包まれる。

 ある日、花束が届かなかった。
 翌日も、ポストは静かなままだった。

 そして日曜日。
 ようやくチャイムが鳴った。
 扉を開けると、見知らぬ男がバラの花束を持って立っていた。添えられた小さなカードには、見知った筆跡でこう書かれていた。

「やっと会えたね」

 とうとう彼女は悲鳴を上げた。


『フラワー』

4/7/2025, 10:37:34 PM