赤って美しいよね。
私、赤色が大好き。
ほら、赤が舞って、綺麗でしょ。世界が赤に染まって、綺麗でしょ。
もしかして、もう見えない?
あなたの赤で、こんなに美しいのに。
『好きな色』
あなたがいたから、今、生きている。あなたのおかげで、今、人生が楽しい。
あなた――推しのおかげで、いきいきとしてる! 元気を貰って、また生きていく。
出会えて良かった! ありがとう!
真面目な話、心の拠り所をいくつか見つけておくの、大事。
『あなたがいたから』
「入る?」
玄関で所在無げに泣き出した空を見上げる君へ、そっと傘を差し出した。
「え?」
「ほら、方向同じだし……」
慌ててそんな言い訳をする。
同じ方向だし、困ってるだろうし!
相合傘で一緒に帰りたいとか、断じてそんな不埒な理由ではない。
「えーと……」
「待った?」
すると君の後ろからすらっと背の高い男が現れた。
「遅いよ」
「ごめんごめん。帰ろうか」
「うん。あ、ありがとうね。大丈夫だから」
こっちを振り向くと、君はその男と一緒に相合傘で行ってしまった。
空よ、泣いてんじゃねぇ。泣きたいのは俺の方だ。
『相合傘』
ここから落ちてしまえば、もうここへは戻って来られないだろうな。と思う。
同時に、ここから落ちてしまえば、今の苦しみからは逃れられるのかもな。とも。
今はまだ、ギリギリな綱渡りをしている。
ここから足を滑らせたら、一巻の終わり。怖い。楽になれるのかもしれない。気持ちが揺れ動く。
でも、そんなことを考えたってしょうがない。まだ踏ん張る。もう少しだけ、頑張ってみる。
その先がどうなるかはわからないけど、まだ落ちていきたくはない。
『落下』
勉強机の引き出しを開けて、狸型をしたロボットが顔を覗かせた。
「ハーイ、ジョージィ!」
「ペニー○イズじゃねーか! ド○えもんじゃねーのかよ!」
ロボットが風船を持って出てくる。
「僕は君を恐ろしい運命から救いに来た」
「いやどう聞いてもむしろ恐ろしい運命にする側だったけど!?」
「僕は未来の世界の者だ」
突然現れたドラ○もんなんだかペニーワ○ズなんだかわからない狸型のロボットらしき者が、そんな突拍子もないことを言い出す。
「なるほど? じゃあ手始めにどこでも○アを出してくれ」
そうお願いすると、そいつはポケットから見覚えのあるピンク色のドアを出した。本物なのか。
行きたい場所を思い浮かべ、わくわくしながらドアを開ける。
しかし、ドアの先は変わらず僕の部屋。くぐり抜けても僕の部屋。
「……どこにも行けないけど?」
「どこでも(置くことができる)ドアだけど?」
「つまりドア型オブジェじゃねーか! じゃあタケコ○ターだ! タケコプ○ーを出してくれ!」
勢い良くドアを閉める。
ロボットはドアを仕舞うと、今度はたくさんのプロペラがついた、なんだかゴテゴテした物を取り出した。
「何これ」
「竹でできたドローン的な物」
「プロペラ多くない? それに人間つけて飛べるの?」
「それくらいプロペラがないと重い物は運べないよ。人間をつけて飛べなくもないけど、頭皮が剥がれる可能性がある」
「恐ろし過ぎるだろ!」
結局、どの道具も使えたもんじゃない。僕は呆れてしまった。
「未来から来たんじゃないのかよ」
「未来に期待し過ぎじゃない?」
ロボットは言った。
……たしかにそうかもしれない。いや、でも、しかし。
「じゃあ僕がもっとすごいもん開発してやるよ!」
「おー頑張れ〜」
こうして僕は発明家を目指し、たくさんの道具を作ることになったのだった。
これがきっかけで、こんな未来が待っていることになるなんて、このロボットが来てくれたことは(使い物にならなかったけど)幸運だったのかもしれない。
ちなみに、ロボットはそのまま居候になった。
「帰れ!」
『未来』