「入る?」
玄関で所在無げに泣き出した空を見上げる君へ、そっと傘を差し出した。
「え?」
「ほら、方向同じだし……」
慌ててそんな言い訳をする。
同じ方向だし、困ってるだろうし!
相合傘で一緒に帰りたいとか、断じてそんな不埒な理由ではない。
「えーと……」
「待った?」
すると君の後ろからすらっと背の高い男が現れた。
「遅いよ」
「ごめんごめん。帰ろうか」
「うん。あ、ありがとうね。大丈夫だから」
こっちを振り向くと、君はその男と一緒に相合傘で行ってしまった。
空よ、泣いてんじゃねぇ。泣きたいのは俺の方だ。
『相合傘』
6/19/2024, 10:59:01 PM