私に不思議な力があれば。たとえば、癒しの魔法や、時を戻せる力があれば。
そしたら、どうにかしてあなたを助けに行くのに。
『やりたいこと』
朝日の温もりを感じて、布団の中で大きく伸びをした。
温かい光が降り注ぐ。良い天気だなぁ……。もう一眠りしたい……。
…………明るいな?
慌てて飛び起きた。
今何時!? うわああぁぁぁぁ!! 家出る時間過ぎてる!? 道理で明るいと思ったんだよ!!
急いで支度を済ませて家を飛び出る。
だんだんと高い位置に変わっていく朝日が、焦る私を照り付けて暑かった。
『朝日の温もり』
ここが人生の分岐点だとして、どちらの道に行けば最善なのか、今は考えられないでいる。
いくつにも分かれている道の真ん中で、ただ動けずにじっと蹲っている。
ここにいたって、どうしようもないのに。もうどうしようもないって、分かっているのに。
『岐路』
世界の終わりに君とディナーがしたいとカッコつけたこと言ったら、じゃあ行こう! となり、近くにこんな素敵なお店があることを知った。
言ってみて良かった。そんな余裕ないなんて言われたらどうしようかと思った。
テラス席で美味しい料理を頬張る。幸せな気分だ。
テーブルの真ん中に置かれた淡いランプの光に照らされた君は、一段と美しく見えた。
「良いお店ですね」
次の料理を運んできた店主らしき男にそう告げると、彼は嬉しそうに笑った。
「このお店は私の夢が詰まっていますから。最後まで見ていたい私の夢なんです」
なるほど。彼にとって何よりも大事なものがこのお店なんだ。
だから、こんな状況で一人でもお店を続けている。
そう、本当に世界が終わりそうなこの状況でも。
ある日突然、地球を征服しに宇宙人が攻めてきた。
徐々に侵略され滅んでいく地球。もうすぐここも終わりだろう。
空がぱっと明るく輝いて、思わず顔を上げる。
空からは無数の光の帯が降り注いでいる。その光景のあまりの美しさに息を呑んだ。
「綺麗だね」
君は言った。
「そうだね」
僕は静かに頷いた。
『世界の終わりに君と』
俺は史上最悪の魔王だ。
極悪非道! 残虐な、泣く子も黙る魔王だ!
「魔王! 覚悟!」
勇者が城に乗り込んで来た。
馬鹿め……どうなっても知らないぞ?
城に爆音が響き渡る。
そうして、ボロボロになった。俺。
「なんか……弱くね?」
「かわいそうになってきた……」
そう。俺は、魔族の奴らにとって、史上最悪の魔王だ。
威厳なんてない。弱い。情けない魔王だ。
「き、今日はここまでにしてやろう」
同情した勇者が帰っていく。
史上最弱で、最高に情けない、最悪の魔王は、こうして今日も魔界の平和を守っている。
『最悪』