今日は朝からなんだかもやもやしている。なんとなくこれかもしれないという理由はあるが、はっきりとそれが原因だとも言い切れない。
曇りの空に、更に霧までかかっている。そんな気分。
でも、そんな日はそんな心を逆に楽しむのだ。
思い切り浸る音楽を聴いて、無駄に暗い妄想でもしてみる。久々の厨二病全開である。
天気だって毎日違うんだ。こんな日があったっていい。
『今日の心模様』
間違いだと理解っていても、愛さずにはいられなかった。
私と貴女は敵対している種族だった。
初めて会った貴女は薄汚れた奴隷だった。そして、逃げて辿り着いた先がここだったようだ。
私には仕える主人がいた。
主人は、気まぐれか、貴女を拾った。まるで捨てられた動物を拾うかのような、そんな扱いで。
正直、敵対している相手だし、そもそもこんな薄汚れた娘を拾うなんて、理解ができなかった。
でも、きっと主人も彼女にどこか惹かれる部分があったのだろう。彼女を拾い、信頼できる人の力を借り、匿った。
この気まぐれがいつまで続くのだろうと思っていた。どうせそのうち飽きる。彼女に様々な物を与え、様々なことを教えるのは無駄に感じていた。彼女は申し訳なさそうにしていた。
しかし、時折見せる屈託のない笑顔に、いつしか惹かれていった。温かい。心が溶かされていく……。そう感じた。
彼女を愛することは間違いだと理解っていた。
きっと、主人も、何も言わないが彼女を愛している。
そもそも私達は本来敵対している相手なのだ。たまたま彼女がここに来ただけで、本当は別の世界の人間だ。
愛してはいけない。
それでも――。
たとえ間違いだったとしても、愛さずにいられなかった。
この間違いが火種となって、いつか大きな炎に変わり、私を燃え尽くすことになるとしても。私は貴女を愛している。
『たとえ間違いだったとしても』
雫と聞くとどこか美しいイメージがある。
でも、たくさんの雫が集まると雨になる。それはさながらキングス○イムのように。つまり、雫はス○イムである。美しいというよりはかわいいだ。
……いや、なんでもない。
たくさんの雫が集まると雨になる。今日の天気のように。
雨も悪くはないけど、やっぱり晴れが好きなんだよね。
明日は天気になぁれ。
『雫』
何もいらないというよりも、そもそも何も持っていない。
何かを手にしたらどう変わってしまうのか、想像もできない。
きっとこのまま何も手にすることはない。それで構わない。
何も持っていないからこそ、何でもできる。
僕は無敵だ。
そうして今日も、ギリギリを生きていく。
『何もいらない』
いかにも怪しい骨董屋で、その水晶玉を見つけた。
友達に連れられて入っただけで、正直店に入るのも嫌だったし、絶対に何も買わないと決めていたのに。
その水晶玉はどの品物よりもきらきらと輝いていて、他の品物はまるで脇役のように見えた。悪く言えば、浮いている。そんな風に感じた。
「その水晶玉は未来が見えるという話ですよ」
店の奥からお婆さんが出てきて、そんなことを言い出した。
「えー? 未来が見れる水晶!? すごいじゃん! 買ってみたら? 見惚れてたみたいだし」
友達が気軽に勧めてくる。
たしかに、見惚れてたけど。綺麗だなって思ったけど。金額見えてる?
「実は品物がなかなか売れなくて、そろそろこのお店も閉めようと思っていたの。もし良ければ安くしますよ」
うぅ〜……それなら?
「それに、私には何も見えなくて。もうこんな歳ですしねぇ」
それって単純にこの水晶玉が偽物なのでは? そもそも本当に未来が見られるなんて、そんな夢のような話があるわけない。
でも、その水晶玉があまりにも綺麗で――気付いたら手元にあった。
「買ってしまった……」
家に帰り、とりあえず机の上に置いてみる。
水晶玉は一層きらきらと輝いている。
なんだかんだで、あまり後悔はしていなかった。
「未来なんて本当に見えるのかなぁ」
もしも本当に未来が見られるとしたら。私は、どんな生活をしているだろう?
素敵な人と出逢って、郊外に赤い屋根のお家を買って、犬や猫と一緒に暮らしたい……。そんな様子が見られたらいいなぁ〜。
なんて、そんなことを考えながら、水晶玉を覗いてみた。少し期待しながら。
水晶玉には何も映らなかった。
「……って、そりゃそうだよねぇ」
当たり前である。そんな上手い話があるはずない。この世には魔法なんて存在しない。
少し残念に思いながらも、インテリアとして部屋に飾っておくことにした。
でもそれから暫くして、映らないのは正しかったのだと実感した。
私も、お婆さんも、きっと、誰が見ても。未来は映らなかった。
『もしも未来を見れるなら』