ママはどこへ行ったのか聞いたら、パパは「ママはお星様になったんだよ」って言った。
だから、夜、星がよく見える公園まで行って、空を見上げながら、どれがママだろうって探した。
僕を探しに来たパパにはいっぱい怒られた。
でも、ママに会いたかったんだ。
僕は寂しいよ。ママは寂しくない?
泣きながら、今度はパパと二人で空を見上げた。
空にはいっぱいの星がある。それなら、ママはきっと寂しくないね。こんなに友達がいるんだから。
ねぇ、ママ、見えてる? 今はまだ寂しいけど、パパと二人で頑張るよ。僕も友達いっぱい作るよ。
星空に向かって手を振った。
『星空の下で』
私とあなたとの関係に名前を付けないで、今はそれでいいと、自分に言い聞かせる。
それでいい。それでもいい。それがいいわけじゃないけど。
そうやってずっと言い聞かせてきた。いつかあなたが私の前から消えてしまう瞬間まで。
そしてそこで初めて、それでいいわけなかったと、強く後悔をしたんだ。
『それでいい』
「無人島に一つだけ持っていくとしたら」
放課後の教室。
そんな他愛もない話を、友人達と始める。
「ゲーム。今やってるやつ、展開がアツくて」
「ゲーム!?」
「前にゲーム内のアンケートであったな、何を無人島に持っていくかってやつ。あれ、持ち物『ゲーム』に投票したのおまえか」
「だったらスマホですよ、絶対。ゲームだってできるし、助けもすぐ呼べる」
「スマホ持ってったところでネット繋げなくない?」
「あ、そっか……」
「とりあえず当面の食料」
「ナイフ……か?」
「サバイバルする気満々だね」
「そうだなー……彼女? でも物じゃないしなぁ」
「何言ってるのよ、もう!」
「余所でやれバカップル」
「私はー……」
ふと顔を上げると、好きな人と目が合った。
慌てて首を振る。
「わ、私もナイフかな! でも、チョコレートとかも非常食には良いんだっけ? ならチョコレートを一欠ポケットに忍ばせて、ナイフは普通に持ち物として」
「それは二つじゃん! ズル!」
「あはははは」
本当は、彼女の名を上げる、あのカップルがちょっと羨ましかった。私も、好きな人が一緒なら、きっと他に何もいらないから。
たった一つだけ、君だけがいれば。
『1つだけ』
『大切なもの』というタイトルで、書き続けていた長編の外伝を書いたことがある。
あの頃の小説を読み返してみようとすると、まぁ拙い文章で直視できない。恥ずかしさに、薄目で流し読みしてしまう。
あの頃の自分は、このタイトルでどんな話を書いていたんだろうか。何を伝えたくてこのタイトルにしたんだろうか。内容はたしか、家族を失った少女の話だった気がする。
今の自分なら、このタイトルでどんな話を書くだろうか。
あの頃の自分は、たしかに文章が上手ではなかったかもしれない(今も上手いわけではないが)。しかし、きっと情熱はあった。勢いがあった。自分の書きたいものを書いていた。
今はどうだろうか。整ったものを書きたい。ただ綺麗な文章を。誰かに評価される文章を。そういったことに取り憑かれ、あの頃のような文章は書けないのではないだろうか。きっと、あの頃の方が楽しんで書いていた。
書きたい。自分が楽しいと思えるものを。またあの頃のような情熱を。
書くのに大切なものは、きっとまだ失っていないと信じたい。
『大切なもの』
「おはようございます。いつものアナウンサーのいつものニュースの時間です。只今、とんでもない臨時ニュースが入ってきました!」
■猫が宇宙船を操縦して月に着陸!?
世界中に驚きと興奮が巻き起こっています。アメリ力のNASÅが公開した衛星映像によれば、猫が宇宙船を操縦して月に着陸したという驚くべき事実が判明しました。映像では、猫がコックピットに座り、操縦スティックを巧みに操作しながら月面に着陸する様子が捉えられています。しかし、映像を拡大したところ、その猫と思われていたものは、猫の着ぐるみを着た犬だということがわかりました。これまでの宇宙開発の歴史に新たな一ページを刻むとともに、猫の着ぐるみを着た犬達の知性と技術力に驚嘆の声が上がっています。
■世界的なミステリー 消えた靴下の行方
世界各地で靴下が何足も消えるという前代未聞の事件の続報です。消える靴下の謎がついに解明されました。最新の科学調査によると、消えた靴下は地底人によって持ち去られていたという衝撃の事実が判明しました。地底人調査総合センター(SSJ)の調査によりますと、世界各地で土の下に大規模な空洞が発見され、その空洞から靴下が大量に出土されました。その中には最近一般家庭で失われた靴下も含まれていたと報告されています。地底人は何の目的で靴下を集めるのか、今後の研究で詳細が明らかになることが期待されています。
■目本政府が異世界語通訳システムの開発を発表!
目本政府が、異世界の住人とのコミュニケーションを可能にする革新的な通訳システムの開発を発表しました。このシステムを使うことで、目本人と異世界人との間でリアルタイムに会話ができるようになります。政府関係者によると、この通訳システムは異世界の言語を解析し、その意味を目本語に翻訳する技術を搭載しています。さらに、他言語への翻訳機能、異世界人の感情や要求にも対応できる機能も追加される予定です。この画期的なシステムが完成すれば、多くの異世界召喚者が喜ぶことでしょう。
■四月一日はエイプリルフール!
四月一日はエイプリルフールです。それにあわせ、古代生物と言われている個人サイトが更新されました。東西京大学の研究チームは、毎年この時期に恒例のエイプリルフール企画を行う為に個人サイトが更新される習性があると発表しました。さらに、個人サイトには管理人が寄生していて、今回のこの個人サイトの管理人は書く習慣アプリへの投稿も行っているが、『エイプリルフール』というお題の投稿が日付が変わってから行われた件は話題の出遅れ感が否めないということです。なお、個人サイトのエイプリルフール企画は無事終了しました。
「以上、ニュースの時間でした。また見てくださいねー!」
『エイプリルフール』