川柳えむ

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「無人島に一つだけ持っていくとしたら」
 放課後の教室。
 そんな他愛もない話を、友人達と始める。

「ゲーム。今やってるやつ、展開がアツくて」
「ゲーム!?」
「前にゲーム内のアンケートであったな、何を無人島に持っていくかってやつ。あれ、持ち物『ゲーム』に投票したのおまえか」
「だったらスマホですよ、絶対。ゲームだってできるし、助けもすぐ呼べる」
「スマホ持ってったところでネット繋げなくない?」
「あ、そっか……」
「とりあえず当面の食料」
「ナイフ……か?」
「サバイバルする気満々だね」
「そうだなー……彼女? でも物じゃないしなぁ」
「何言ってるのよ、もう!」
「余所でやれバカップル」
「私はー……」
 ふと顔を上げると、好きな人と目が合った。
 慌てて首を振る。
「わ、私もナイフかな! でも、チョコレートとかも非常食には良いんだっけ? ならチョコレートを一欠ポケットに忍ばせて、ナイフは普通に持ち物として」
「それは二つじゃん! ズル!」
「あはははは」

 本当は、彼女の名を上げる、あのカップルがちょっと羨ましかった。私も、好きな人が一緒なら、きっと他に何もいらないから。
 たった一つだけ、君だけがいれば。


『1つだけ』

4/3/2024, 10:39:28 PM