川柳えむ

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1/8/2024, 8:34:34 AM

 空は青く澄み渡り、ただ冷たい風だけが吹き抜ける。
 ずっと待っているのに、出逢えない……雪。
 雪が見たい。早く。この悲しみを白で覆い隠してほしい。
 世界を塗り潰してくれ。
 何も見えないくらいに、真っ白く。


『雪』

1/7/2024, 9:00:23 AM

「行こうか」
「それじゃあ出発ー!」
 彼女と駅前で待ち合わせて、予定していた場所へと向かう。
 今日は彼女に楽しんでもらいたくて、自分がデートの計画をした。
 まずは、そこの人気のお店でモーニングを――

「休業」
 何でだ。よりにもよって、今日休業なんだ。
 たしかに不定休という情報は見たけど、何で、どうして。最初から連絡して聞いておけば良かった。ちゃんと予約を取れば良かったんだ。
「えーと……私別にどこのお店でも大丈夫だよ?」
 そうして、彼女に引かれて別のお店に入る。
 ……出鼻を挫かれてしまった。
 今日は自分が彼女を楽しませると決めていたのに。情けない。
「次はどこ行くの?」
 そうだ。落ち込んでばかりいられない。次は――

「水族館です!」
 近くの水族館までやって来た。
 冬でもいろんなショーが見られるという。
「イルカショー始まるって。行こう」

「……いやぁ、冬って、寒いねぇ……」
 屋外で水を使うショー。
 思いのほか寒くて、震えながら館内へやって来た。
 これなら、最初から寒いかもしれないって、防寒対策ちゃんとしてくるべきだった。いやそもそも、水族館じゃなくて別の施設へ行くべきだったんだ。
「行こう」
「え、ちょっと待って。まだ見てるよ」
 彼女の腕を引いて、次の場所へ。
 今度こそ失敗しない。

「映画を観よう」
 場所を移動して、映画館へ。
「いいけど……どれ観るの?」
 時間を確認しながら、丁度良さそうな映画を選択する。
 チケットとポップコーンを購入し、座席へ向かった。

「疲れてるんだね」
 …………彼女のデートの最中、映画を観ながら、思い切り寝てしまった……。
 正直内容も微妙だったし、眠くもなるだろ、こんなの……。
 彼女を楽しませたいのに、上手くいかない。空回りばかりしている。
 どうしていつもこうなんだ。いつもしっかり者の彼女が手を引いてくれる。だからこそ、今度はこっちが手を引いてあげたかった。
「お疲れ様。寝ちゃったのって、今日のこと一生懸命考えてくれたからでしょ? クマが出来てるよ」
 ……彼女は何でもお見通しだ。
 格好付けたくて、人気のスポットをいくつも調べたんだ。昨夜も考えて、緊張して、そして楽しみで、よく眠れなかった。
「別にどこでもいいのに。どこだって楽しいんだよ。君と一緒なら」
「……! 俺だって!」
 俺だってそうだ。どこだって関係ない。君がいれば、どこだって天国だ。
「でしょ? そんな簡単なことに気付いてなかったの?」
 笑いかけてくる君。いつもこうやって、大切なことを思い出させてくれる。
 場所なんて些細なこと。君といる。それだけが大事なことなんだ。
「君と一緒なら」
 君と一緒に、どこまでも行ける。


『君と一緒に』

1/6/2024, 7:52:44 AM

 空が青く澄んでいる。
 刺すような冷たい空気が頬を撫でる。
 吐き出した白い息が寒空へ上っていく。
 気持ちの良い冬晴れ。
 駅前で君を待つ。
 少しして、改札から君が出てきた。
 すぐさま私を見つけると、手を上げながらこちらに駆け寄ってくる。
「行こうか」
 好きな場所へ、二人で。この空の下どこまでも。


『冬晴れ』

1/5/2024, 6:21:09 AM

 幸せとは何か。
 書こうと思えば、悩み過ぎてわからなくなる。
 お金を手に入れること? 好きな人と過ごすこと? 楽しいことをすること?
 どれか一つに定めたとして、それをお話に落とし込もうとすると、なかなか良い文章が浮かんでこない。
 もしかしたら、自分は本当の幸せを知らないのかもしれない。幸せなんて実は存在していないのかもしれない。
 結局、幸せなんてものは意識しないと気付けない。そんなちっぽけなもの。たいしたことのない小さな出来事を、誰かよりはマシだとか、恵まれているとか、幸せだとか言い聞かせて生きている。
 そんな自分がどうやってこの言葉を使って何かを書けるのか。
「おしるこできたよー」
 そんな風に頭を抱えていたところ、母がおしるこを作って持ってきてくれた。お正月だ。
「やったー!」
 年末についた餅を頬張る。
 あー、幸せだー!
 ……ん? そうなのか。幸せとはおしるこだったようだ。


『幸せとは』

1/4/2024, 2:39:13 AM

 7:15前後。これが我が家から見える初日の出の時刻。
 国立天文台が発表している時刻よりもずっと後だ。しかし、毎年見ているから知っている。山に囲まれているこの地域じゃ、予想時刻よりも遅い。
 今年も二階へ上がり、初日の出と富士山が望める出窓に座り、外を眺める。
 スマホのカメラをセットして、録画を始める。そしてたっぷり十分間。太陽が覗く前から登り切るまで、その様子を収めることができた。
 そうしてようやく、今年を迎えた実感が湧いてくる。
 さて、昨夜も遅くまで起きてたし――というか、今回はこの時間までほぼ寝ずにきちゃったし、しっかりと寝直しますか。
 そして始まる寝正月……。


『日の出』

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