正直まだ新年を迎える準備なんてできていない。
ごめんなさい。年賀状すらできてない。かなりやばい。
大掃除だってまだ途中で……。
今年暖かかったせいか、まだ感覚が一ヶ月くらいずれてるんです。
でも時間は待ってくれない。
年末の特別番組が始まっている。もう年越しそばも食べちゃった。
終わる。今年が終わる。
あぁーあと一時間もない……。
観念して言っておくか。
「良いお年を!」
『良いお年を』
夏まで何をしていたのかはよく覚えていない。
夏、このアプリを始めた。
みんなに♡を貰った。
みんなの投稿を読んだ。
面白い作品に楽しい気持ちと悔しい気持ちが混ざり合った。
たくさんのいろんな面白い作品が書きたいと思った。
だからとにかく毎日投稿を続けてみようと頑張った。
ちゃんと休まず続けてこられた。
スマホが壊れた。
引き継ぎ設定をしていなかったからアカウントが使えなくなった。
泣いた。
だからといって書くことを諦めたくはなかった。
もう一度作り直した。
また1から始めてみた。
みんなに♡を貰った。
毎日毎日頑張った。
これからも頑張る。
いつも読んでくれてありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
良いお年を!
『1年間を振り返る』
こたつに入り、みかんを剥く。
向かいでは彼女がみかんを横一列に並べている。
「何やってるの」
そう尋ねると、彼女はにやりと笑った。
「問題。みかんを並び替えてできる甘いものって何でしょう?」
「……甘味?」
「正解!」
「甘いものが食べたいの?」
「正解! 甘味処とか、行きたいな~」
「甘味処って、本当はあまみどころって読むんだよ」
「えっ!? 知らなかった!」
「じゃあ甘いもの食べますかー」
こたつから立ち上がり、剥いたみかんを彼女の口に突っ込んだ。
「このみかん甘い!」
今度はこちらから彼女に問いかける。
「問題。みかんを並び替えてできる家って何でしょう?」
「……民家?」
「正解! 甘味処じゃなくて、民家――家であんみつとかどうですか? 作るよ」
「あんみつ! 食べるー!」
みかんを手に持って、彼女は嬉しそうに飛び上がった。
『みかん』
子供の頃は、夏に次いでこの長い休みが楽しみだった。
祖父母の家に行って、餅をついて、親戚が集まって、おせちを食べて、それでお年玉を貰って、遊んで。
大人になってもこの休みは楽しみだ。単純に長い休みだからね。
きっと誰かの家に嫁入りとかしたら嫌いになるんだろうけど、そういうのもなく好き勝手に生きている。もう親も親戚も何も言わない。
でも、帰省を楽しみにしてくれている。
私も帰省は楽しみだよ。実家の猫に会えるしね。あとやっぱり、親の顔も見たい。
そんな感じで今年の冬休みも帰省します。
『冬休み』
道端に手袋が片方落ちている。
――なんでこんなところに?
ふと、考えてみる。
母に抱っこされた子供。嵌めていた手袋をもう片方の手で引っ張って脱いでしまう。
それを握ったまま手を振り上げたりしていたが、ふと手から取り落としてしまう。
母は気付かない。
そうして、手袋は道端に置き去りにされたまま。帰ってこない持ち主をここで待っているのだ。
――いや、絶対違うな。
だって、どう見てもこれは大人の男のサイズの手袋だ。
ならば、こういうことがあったとか?
年末。忘年会シーズン。
酔っ払った男は、持っていた鞄もちゃんと閉じず、そこから持ち歩いてた片方の手袋が落ちたことにも気付かず。
かわいそうに。手袋はそのまま気付かれずに置いていかれてしまった。
――めちゃくちゃありそう。むしろそれだろう。
でもそれじゃあロマンがない。
せっかくなので、もっとロマンチックな出来事を考えてみる。
年の瀬。カップルが北風吹きすさぶ道を歩く。
彼女の冷えた手を、彼がそっと自分のコートのポケットに招き入れた。
元々付けていた邪魔な手袋は反対側のポケットへ。
そのポケットから零れ落ち、道端に残していったことにも気付かない。彼には彼女しか見えていない。
手袋はそんな二人の後ろ姿を静かに見送った。
――よし、これだ。これでいこう。
これでいこうって何だ。全ては単なる想像だ。
真実は落ちているその手袋しか知らない。
『手ぶくろ』