川柳えむ

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12/30/2023, 5:55:06 AM

 こたつに入り、みかんを剥く。
 向かいでは彼女がみかんを横一列に並べている。
「何やってるの」
 そう尋ねると、彼女はにやりと笑った。
「問題。みかんを並び替えてできる甘いものって何でしょう?」
「……甘味?」
「正解!」
「甘いものが食べたいの?」
「正解! 甘味処とか、行きたいな~」
「甘味処って、本当はあまみどころって読むんだよ」
「えっ!? 知らなかった!」
「じゃあ甘いもの食べますかー」
 こたつから立ち上がり、剥いたみかんを彼女の口に突っ込んだ。
「このみかん甘い!」
 今度はこちらから彼女に問いかける。
「問題。みかんを並び替えてできる家って何でしょう?」
「……民家?」
「正解! 甘味処じゃなくて、民家――家であんみつとかどうですか? 作るよ」
「あんみつ! 食べるー!」
 みかんを手に持って、彼女は嬉しそうに飛び上がった。


『みかん』

12/29/2023, 12:48:26 AM

 子供の頃は、夏に次いでこの長い休みが楽しみだった。
 祖父母の家に行って、餅をついて、親戚が集まって、おせちを食べて、それでお年玉を貰って、遊んで。
 大人になってもこの休みは楽しみだ。単純に長い休みだからね。
 きっと誰かの家に嫁入りとかしたら嫌いになるんだろうけど、そういうのもなく好き勝手に生きている。もう親も親戚も何も言わない。
 でも、帰省を楽しみにしてくれている。
 私も帰省は楽しみだよ。実家の猫に会えるしね。あとやっぱり、親の顔も見たい。
 そんな感じで今年の冬休みも帰省します。


『冬休み』

12/28/2023, 4:23:55 AM

 道端に手袋が片方落ちている。
 ――なんでこんなところに?
 ふと、考えてみる。

 母に抱っこされた子供。嵌めていた手袋をもう片方の手で引っ張って脱いでしまう。
 それを握ったまま手を振り上げたりしていたが、ふと手から取り落としてしまう。
 母は気付かない。
 そうして、手袋は道端に置き去りにされたまま。帰ってこない持ち主をここで待っているのだ。

 ――いや、絶対違うな。
 だって、どう見てもこれは大人の男のサイズの手袋だ。
 ならば、こういうことがあったとか?

 年末。忘年会シーズン。
 酔っ払った男は、持っていた鞄もちゃんと閉じず、そこから持ち歩いてた片方の手袋が落ちたことにも気付かず。
 かわいそうに。手袋はそのまま気付かれずに置いていかれてしまった。

 ――めちゃくちゃありそう。むしろそれだろう。
 でもそれじゃあロマンがない。
 せっかくなので、もっとロマンチックな出来事を考えてみる。

 年の瀬。カップルが北風吹きすさぶ道を歩く。
 彼女の冷えた手を、彼がそっと自分のコートのポケットに招き入れた。
 元々付けていた邪魔な手袋は反対側のポケットへ。
 そのポケットから零れ落ち、道端に残していったことにも気付かない。彼には彼女しか見えていない。
 手袋はそんな二人の後ろ姿を静かに見送った。

 ――よし、これだ。これでいこう。
 これでいこうって何だ。全ては単なる想像だ。
 真実は落ちているその手袋しか知らない。


『手ぶくろ』

12/27/2023, 5:04:20 AM

 変わらないものはない。

 ――というお題を元に物語を執筆していた。
 なかなか良さそうな物語が書けた。ちゃんとした物語だ。

 操作をミスした。
 一瞬で書いたものが消えた。
 これだからスマホは嫌いなんだ。パソコンならCtrl+Zで一つ手前の作業に戻せるのに。
 泣きたい。

 変わってしまった。物語が、一瞬で、白紙に。

 変わらないものはない。
 わかっているけど。そうじゃない。
 こういうのは、時間が経ち、街並みが変わってしまったとか、人が変わってしまったとか、そういった物語の為にあるもので。
 物語を白紙に変える為のものではなくて。
 今、その実体験は、いらない……。


『変わらないものはない』

12/25/2023, 8:54:50 PM

 今時誰もやっていないだろう個人サイトをクリスマス仕様にして。
 とりあえずせっかくのクリスマスだからと、お酒とチキン、ケーキを飲み食いして。
 なんとなくクリスマスソングを流してみて。
 見たい特別番組を見て。
 サンタクロースを追跡して。
 急に街が見たくなって、でもわざわざ人混みを出歩くのも大変だしと、窓を開けて冬の空気を感じて。
 近所の家のイルミネーションが視界に入って。
 みんながいろいろなクリスマスを過ごしているんだろうなぁ、と思いを馳せる。そんな少しだけ特別な日。


『クリスマスの過ごし方』

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