一年後。考えたくもねえよ…。
空に吸われる15の心。分かる人にはわかると思うんだけれども、未来なんて不確実。もしかしたら、案外病気や事故でぽっくり逝っているかもしれない。でも、そんなことを言ったら、あなたは哀しい顔をするから。だから私は、今日も笑顔で、明日の話をするんだ。
「一年後」
子供の頃。
そう言われて、自分の中の奥の奥のそれまた奥を漁ってみたら、存外古い記憶が蘇ってきた。
その日は暑くて、早々に夏の友をほっぽりだし、自転車に跨った。姉のお下がりである小さな水色の自転車とソーダ味のアイスバーが、私の夏の相棒である。ジリジリと肌を焦がす太陽のもと、軽快に田んぼ道を走り出した。
薄暗い倉庫の入り口で、祖父の名を大声で叫べば、「よう来たなぁ」と、仕事着の祖父が迎えてくれた。そうして祖父の膝の上によじ登り、古びたTVを眺めるのが至福の時間だった。画面の奥では、高校球児たちが汗を流している。彼らの息遣いに呼応するように、祖父の呼吸も少しずつ早まる。野球のルールなんてよくわからないけれど、私の息も忙しなくなる。
「打った!」
祖父が弾かれたように叫び、膝の上の私もカクンと揺れる。
「打った、打ったねえ」
私も祖父の真似をして言う。
祖父は、野球が好きだ。取り分け甲子園は熱心にみていた。そこには、祖父の過去の記憶をフラッシュバックさせる、何かがあったのかもしれない。画面を見つめる、あの瞬間の祖父の真剣な顔が、どうしてか思い出されるのである。
「子供の頃」
朝の時間というものは、本当に慌ただしくすぎていく。
ベッドから飛び起きて、階段を駆け降りる。顔を洗って歯を磨いて、朝食をかき込んで。鍵と定期を確認したら、家を出る…そうそう、お弁当も忘れずに。
しかしそんな中でも、電車に乗る時間は格別だ。田舎の電車だからだろう、人もそんなにいなくて、ゆったりと心地よいリズムに揺られながら、窓の外を眺める。橋の上から眺める、朝日に輝く水面が今日も悠然と微笑んでいる。
さあ、プラットホームから出たら、とうとう1日が始まる。私の忙しなく愛おしい、1日が。
好きな色。毎年書かされる自己紹介カードの中の、唯一の難点。それまでワクワクして書き進めてたのに、そこで鉛筆が止まっちゃった。
私気分屋だからさ、ガラス玉みたいに気まぐれな色をしてるの。誰かが当ててくれた光で、何色にでも染まれるの。
私は私を輝かせてくれる、全ての色が好き。
「好きな色」
誰がに依存してはいけない。人は元々1人なのだから。
そんなことを叫ばれる世の中だけど。
あなたがいたから、私はあの時諦めずにいられた。
あなたがいたから、勉強も頑張れた。
あなたがいたから、もっと素敵な自分になりたいと思えた。
あなたがいたから、私は強くなれた。
私の人生に彩りとスパイスを与えてくれるのは、いつもあなた。
そんなあなたに、心からの尊敬と感謝を。
「あなたがいたから」