笑顔を作るのが苦手である。無理矢理作ろうとすると、歪な顔した自分の顔が鏡に写って、少し憂鬱になったこともある。窓越しに写る楽しそうに遊んでいる子供達を見て、あの笑顔を見習いとなと思う。
笑顔をうまく作る為にまずは、子供の真似をすることにした。子供と言えば、外で走り回ってるイメージがあるので、とにかく走った。毎日、朝から晩まで走り、僕のぽっちゃりしたお腹も、痩せて健康になった。でも笑顔を作れない。
気持ちを切り替えて次の作戦に移る。やはり、子供と言えば、突然のプレゼントに喜ぶイメージがある。なので、友人に笑顔になりたいから僕が寝ている時に、クリスマスプレゼントを置いてくれと頼んだが、断れてしまった。友人には、「お前は頭が可笑しいのか」と言われてしまった。解せぬ。
子供のように笑顔を作るのは無理なのかもしれないと諦めかけたその時、「そうた、子供になれば良いんだ」天命が降りた。
まずは、友人に幼児化する薬をくれと頼んだが、断れた。さすがに無理だったらしい。でもまだ諦めないぞ。そうだ、催眠術をかけてもらえば良いんた。友人の知り合いの催眠術師に、子供になる催眠を掛けてもらて、ようやく僕は、子供のような笑顔を作る事に成功した。
放課後、それは、学校と言う名の監獄から解放された時間。
この限られた時間をどう使うのか?考えた結果、何も思い付かない。
やることもないし、やりたいこともない。
時間だけがある時は、みんなはどうするのだろう?寝る?食べに行く?分からない。何も分からない。
やっぱり、三大欲求を満たすための行動を取るのだろうか?それとも、真面目に勉強をするのだろうか?人によって放課後の過ごし方が違うし、どれが正解かもないんだろう。
そんな、下らない事を考えながら、放課後の時間が過ぎて行く。
ー私はカーテンの偉大さに気付く。ー
図書館で男が絵本を読んでいた。読んでる途中に違和感を覚える。何か読みづらい。目がチカチカすると。
「これじゃぁ、豆太が祖父のために、ずっと恐れていた、もちもちの木の恐怖を乗り越えて、病院に行く、あの名シーンが良く見えないじゃん」
途方に暮れていた男だが、ふと、窓を見ると、日差しが強い事に気付いた。
「原因が分かった。この日差しだ。そして、解決方法も分かった。カーテンだ。閉めれば、日差しを遮れる」
この日を境に男は39年目の生にしてカーテンの偉大さに気付く。
「お前はなんて素晴らしいんだ。私の読書タイムを邪魔する、憎き、日差しから守ってくれるなんて。おまけに、私のプライベートを家の外からの視線まで守ってくれる。これで、全裸を見られる心配もない。あぁ、何で今まで気付かなかったんだ」
男は、恍惚な顔を浮かべて、家のカーテンを開けたり、閉めたりしながら、カーテンの偉大について1人語る。
「そろそろ、仕事の時間だ」
カーテンについて思う存分、語り尽くした男はパソコンを開き、日課のおしゃぶりを咥えながら、仕事に取り掛かる。
ー涙の理由ー
今、キッチンに立っている。いつも料理を作ってくれる妻がいないので自分で作る事にした。自慢ではないが、料理をするのは人生初である。今世紀最大のピンチだ。何を作ればいいのか分からないので取り敢えず冷蔵庫を覗いて見たが、見事に野菜しかないようだ。仕方ないので野菜炒めを作る事にした。見様見真似に猫の手を作って野菜達を切り刻む。人参、もやし、キャベツ、玉ねぎ、赤ピーマンをフライパンにぶち込み油で炒める。特に赤ピーマンが結構余っていたのを全部入れた結果、赤一色になったが(まぁいっか)と思い、最後に塩コショウを掛けて完成させる。初めて作った自分の料理に感動を覚えつつ、いざ、実食。
死ぬほど涙が出た。
数日後経ったある日妻が突然、「冷蔵庫に入れてたハバネロ知らない」と聞いてきた。何かの冗談だと思い知らないと答えた。
僕の名前はココロオドル。ピチピチの小学五年生✨️
名前の由来は、どんな時でも明るく元気にこころ躍らせる人になってほしいて、おばあちゃんが言ってた。お父さんとお母さんは、遠い所で旅に出て、今はおばあちゃんと二人で住んでる。少し淋しいけど僕は元気に過ごしてます。
今日は月曜日で学校に行く日。朝の支度をして、おばあちゃんに行ってきますを言って学校に登校する。
「おい、愉快人また薄気味悪い笑顔して気持ち悪いんだよ」
教室に入ると同級生の恫喝剛くんが話しかけてくる。周りから僕はいつもニコニコしてて、ココロオドルだから愉快人て呼ばれてる。
「やぁ、剛くんおはよう」
僕は笑顔で楽しそうに挨拶した。
「休み時間になったら校舎裏に来いよ。絶対だからな。」
釣り上げた目で僕を見ながら剛くんは、言いたいことを言って、席に戻った。チャイムが鳴ったので僕も席に戻り、一日の朝が始まった。
「やっと来たな、さっさと金を寄こせ」
ここは、校舎裏で誰も人が寄り付かない場所。剛くんは、僕がおばあちゃんからお小遣いを貰ってることを知っていて、毎回、お金の要求をしてくる。断ると、お金を渡すまで殴られ続ける。それでも僕は、笑顔で渡す。約束だから。
「たったこれだけかよ。仕方ねえな。また明日ババアから金分捕ってきた金寄こせ。分かったか」
そう言って、お金を受け取ると興味を失って教室に戻っていた。そんな剛くんの後姿を見ながら僕は、笑顔で見送った。
「おばあちゃん、ごめん、お手伝いたくさんするからまたお小遣いください」
学校が終わり、家に帰った僕は、おばあちゃんにお小遣いを貰いに行った。
「また、虐められてるのかい」
そう言ったおばあちゃんの顔は悲しい顔していた。なので、精一杯の笑顔を見せて(違うよ)と否定した。良い子にしたら、毎日楽しくしていたら、お母さんとお父さんが返ってくるて約束したから。だからお小遣いがほしいとおばあちゃんに言った。
「もういないんだよ。お前が小5の時にお前の両親は事故で亡くなったんだ。現実を受け入れるのは辛いかもしれない。でも、高校生になったんた。少しでも前に進んでくれ」
涙を流しながら必死に訴えるおばあちゃんを見て、僕は安心させるように言った。
「大丈夫だよ。おばあちゃん、絶対お父さんとお母さんは帰ってくる。だってこんなに僕は、毎日ココロオドらせて楽しく過ごしてるんだから」
ケタケタと笑いながら口を釣り上げておばあちゃんを見つめる。