複雑怪奇の羅針盤

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    ー私はカーテンの偉大さに気付く。ー

 図書館で男が絵本を読んでいた。読んでる途中に違和感を覚える。何か読みづらい。目がチカチカすると。

「これじゃぁ、豆太が祖父のために、ずっと恐れていた、もちもちの木の恐怖を乗り越えて、病院に行く、あの名シーンが良く見えないじゃん」

途方に暮れていた男だが、ふと、窓を見ると、日差しが強い事に気付いた。

「原因が分かった。この日差しだ。そして、解決方法も分かった。カーテンだ。閉めれば、日差しを遮れる」

 この日を境に男は39年目の生にしてカーテンの偉大さに気付く。

「お前はなんて素晴らしいんだ。私の読書タイムを邪魔する、憎き、日差しから守ってくれるなんて。おまけに、私のプライベートを家の外からの視線まで守ってくれる。これで、全裸を見られる心配もない。あぁ、何で今まで気付かなかったんだ」

男は、恍惚な顔を浮かべて、家のカーテンを開けたり、閉めたりしながら、カーテンの偉大について1人語る。

     「そろそろ、仕事の時間だ」

カーテンについて思う存分、語り尽くした男はパソコンを開き、日課のおしゃぶりを咥えながら、仕事に取り掛かる。



10/11/2024, 3:16:23 PM