人種の差別に関して、善悪を問うのは難しい。
誰かが悪いわけではない。
ただ、歴史が変わろうとすることに歯止めをかけているだけだ。
だからと言って、変わることに善悪を問うのもまた難しいことだが…
とある学者はそう言った。
そんな彼も虫を殺すことは悪くないと思っている。
タイトル:善悪
『誰よりもずっと貴方が羨ましいよ』
誰よりも僕の事を分かってくれて
誰よりも僕の話を熱心に聞いてくれて
誰よりも僕のことを愛してくれて
誰よりも僕を…見守ってくれてた
なのになんで
貴方は僕を置いていってしまったんだ
遠く会える保証のないところへ
ずっと貴方に僕は言い続けたじゃないですか
早く、早く楽になりたいって
でも、貴方はそれを止めてくれた
だから今、こうしてまだ生きていたいと思えるようになったのに
貴方が羨ましい
あれほどいくなと言ったのに
何故、貴方が先にいってしまうんだ
……。
でも、僕はまだいく訳にいかない
貴方との約束くらい守りたいから…
どうか僕のこと
また、誰よりも見守ってくれませんか?
先生。
タイトル:誰よりも、ずっと
『一つだけ、お願いがございます
満たしてほしいものがあるのでございます』
そう言うと、彼女は襖の奥に手を伸ばした。
ガコンという大きい音ともに掛け軸が反転し、奥へと続く階段が出てきた。
彼女は、代々この家に仕えてきた家政婦の一人だ。
有能であるくせに美しい容姿を持っている。
彼女がこの家に来てから数年が経ち、不慣れだった彼女は今やどこかへ行ってしまった。
性格は、天然でよく柱に頭をぶつけたり、何もない所でコケたりもする。
数年ではあるが僕は彼女をずっと見てきた。
どうやら、僕は彼女に惹かれてしまっているらしい。
だからと言って、彼女に手を出すほど僕は愚かじゃない。
そう言いつつも彼女が夜な夜な一人で家を歩いて
いるものだから気になって後をつけていた。
彼女は、どうやら僕に気付いていたらしく、何をしているのかと聞いてきた。
聞きたいのはこちらなのだが…
正直に話すと、彼女はクスッと笑い、付いてきて ほしいと僕に言った。
後に続くと、そう滅多に入らないお爺様の部屋だった。
すると、彼女はいきなり『私も旦那様にお話しなければならないことがございます』
彼女の美しい笑顔でそう言われたものだから少しよくないことを考えてしまった。
着物を口に当て、ゆっくりと唇を動かす。
空いた掛け軸の奥に進むと、やけにそこがゾワッとなるほどひんやりとしていた事に気づく。
何を言っても言い返さなくなる彼女がただただ不気味で堪らなかった。
彼女が突然その場で止まる。
階段は、続いているしまだ先があるのに
彼女は、右の壁に指を指し、笑顔で言う。
『あれは旦那様の一族の皆様でございます。』
壁には、大量の骸骨が飾られていた。
思わず、声が漏れる。
彼女は、そんなことも気にせず、話続ける。
『旦那様の席はあちらにございます』
そこには、何も飾られていない台が一つ。
どこからか空腹を迎えただろう音が鳴り響く。
同時に冷や汗が止まらない。
足を前に逃げようとした。
でも、無理だった。
その時には足は…
体制がすべて崩れる。
情けない声が漏れる。
彼女は、笑顔になる。
振り上げたそれな鋭い爪なのか牙なのか、はたまた凶器なのか。
わからな…
タイトル:たった一つだけ
そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ
私、あなたの事は確かに好きよ
イケメンで声も良くてスーツがよく似合ってる
でも私、彼を忘れられないの。
私のことをちゃんと見てくれて、話しかけてくれて優しい彼。
彼が私を愛してくれるように私も彼を愛していた。
見てしまったの。
ある日、彼が他の女といるところ。
子供もいた。
あぁ、彼は私のこと何にも思ってないんだって。
仕事だけの関係。そんなの…
私は、愛してるのに
でも、結局彼はここに来る前までずっと私のことを見てくれたわ。嬉しかった。
だから、お願い。
彼を返してよ
全く、この女。やっぱり気が狂ってやがる。
一家全員を殺した挙句、旦那さんの死体を持ち帰るなんておぞましいことをしておきながら、反省どころか自分は悪くないと思ってやがる。
とある刑事は、そう言って部下の一人に愚痴を零した。
タイトル:見つめられると
なんでかな
こんなにも見慣れてしまったのにまだ、好きになれないなんて…。
ここに来てから何年経ったかな、
狭いようで広いこの部屋から見えるのは、毎日変わらない同じ景色。
周りからは、悲痛にも似た叫びと早くここから出たいという悲願の声。
周りの人間は、そんなことも知らずにただニコニコ笑っている。
でも、僕らはそんな人間達に必死に呼びかける。
声なんて届かないのに。
あぁ、やだな。
早く僕をここから出してくれないかな
好きじゃないよ。こんなとこ。
ずっとここにいるから分かるんだ。
この先に待ってる僕の運命。
たすけて。そんな言葉もきっと届かないよね。
ショーケース越しに見えたのは、不貞腐れたように下を向く年配の犬だった。
ペットショップに犬を見に来ただけだったんだ。
でも、どうしてもこの子が目から離れなかった。
ありがとう。とても楽しかったよ。
○○。ゆっくり休んでね。
好きじゃなかった人間が好きになれたような気がする。
タイトル:好きじゃないのに