あれを君にプレゼントしたい。
どんな手を使ってでも。
あれがあればきっと君は僕に振り向いてくれる。
やっとこれを君に渡せる。
こ、これ僕からのプレゼント!
開けてみて!
そう言って僕は、君の両親をいっぱいに詰め込んだ箱を渡した。
タイトル:あなたに届けたい
僕の愛した街はとても美しい所だった。
自然と社会が均等に保たれていて、街には笑顔も溢れていた。
それはまるで幻想郷の様な街だった。
僕は、旅好きで旅の途中で出会った彼女と一緒に色んなところに出掛けていた。
僕は、いつも彼女に僕の愛した街について話していた。彼女もそれを喜んで聞いてくれて、いつか2人であの街に一緒に行こうと約束した。
今は、別の街に来ている。
彼女は、出かけたままずっと帰って来ない。
なので僕は、彼女を探して色んな街を転々としている。
でも、どこへ行っても彼女は見つからない。
それにどんなに向かっても、僕の愛したあの街には辿り着けない。
どうして、、、
見つからないんだ。
どうして、、、
辿り着けないんだ。
彼が昏睡状態になってから1年が経った。
私が出掛けている間に事故に巻き込まれ、彼は未だに目を覚ましていない。
彼はずっと、あの街の話をしてくれた。
きっと、貴方の事だから眠りながらも探しているのでしょ?
だから、せめて私の手で……
タイトル:街へ
優しいって難しい。
誰かに良くすれば、優しい。
手伝ってくれれば、優しい。
話を聞いてくれれば、優しい。
否定しないで黙って聞いてくれたら
黙らず意見を出してくれたら
怒らないでくれたら
ちゃんと叱ってくれたら
そんなの主観の違いだ。
分かってるよ。分かってる。
世の中って変に優しいにこだわり過ぎなんだよ。
僕はそう思う。
現に僕も優しいに甘えてる。
こうして、目の前で僕を殺そうとしてる君が
もし僕を見逃してくれるなら、君を僕は『優しい』と言うだろう。
じゃあ、君がもし僕を殺したら、君は……
俺は、なんて優しい人間なんだ。
目の前にいるこいつを苦しまずに解放してあげるなんて。
苦しんでいるやつの為にオレがこの世界から
みんなを解放してあげるんだ。
天国に行けるように。
さて、次は誰をカイホウシテアゲヨウカ
タイトル:優しさ
今日はやけに目が冴えていた。
きっと昼間に寝過ぎたせいだろう。
少し気分転換のために散歩に行くことにした。雪が数センチ積もった道路を見て、もう冬かと心の中で呟いた。
絵になりそうだ。月と雪いい題材だ。
油絵用の道具を持ってきてよかった。もう少し行った先にある公園にでも寄って絵を描こう。
近所にあるコンビニに差し掛かった辺だろうか、男女の激しく争うような声が聞こえた。
関わりたくないと思った俺は、あえて別の道を行こうと進路を変えようとした。だから俺は足を‥
その時だった。
女の甲高い悲鳴と苦しそうに叫ぶ男の声が辺りに響き渡る。
月下に照らされ、赤黒い液体が男の喉元から噴水の如く散らされていた。
男の周りにあった雪は、赤く綺麗に輝いていた。
女は、気絶したのか声が聞こえなくなっていた。
そして、俺は走っていた。
分からなかった。
俺はなんで走っている?
息が荒くなってきた。風が冷たい。
手がやけに悴む。
口から声が漏れてくる。
一刻も早く現場から立ち去りたかった?
なぜ?
俺は、関係ないだろ。
逃げるように走る意味は無い。
あれ、そういえば。
アノ男。
見たことある。
昔、俺の絵をバカにしたやつだ。
ガンバッテ描いたのにあいつが台無しにシタんだ。
ズタズタに切られて可哀想な俺の傑作。
あいつの仲間も俺のコト。
ハ‥ハハ、アハハハ。
いい絵が描けそうな気がする。
俺は急いでキャンパスを出した。
次の日、とある公園で一枚の油絵が雪の上に置いてあったらしい。
その油絵は、恐ろしいほどに赤黒い。
だけど、とても芸術的で美しい油絵だ。
それは、殴られたように描かれた赤い月だった。
タイトル:ミッドナイト