今日はやけに目が冴えていた。
きっと昼間に寝過ぎたせいだろう。
少し気分転換のために散歩に行くことにした。雪が数センチ積もった道路を見て、もう冬かと心の中で呟いた。
絵になりそうだ。月と雪いい題材だ。
油絵用の道具を持ってきてよかった。もう少し行った先にある公園にでも寄って絵を描こう。
近所にあるコンビニに差し掛かった辺だろうか、男女の激しく争うような声が聞こえた。
関わりたくないと思った俺は、あえて別の道を行こうと進路を変えようとした。だから俺は足を‥
その時だった。
女の甲高い悲鳴と苦しそうに叫ぶ男の声が辺りに響き渡る。
月下に照らされ、赤黒い液体が男の喉元から噴水の如く散らされていた。
男の周りにあった雪は、赤く綺麗に輝いていた。
女は、気絶したのか声が聞こえなくなっていた。
そして、俺は走っていた。
分からなかった。
俺はなんで走っている?
息が荒くなってきた。風が冷たい。
手がやけに悴む。
口から声が漏れてくる。
一刻も早く現場から立ち去りたかった?
なぜ?
俺は、関係ないだろ。
逃げるように走る意味は無い。
あれ、そういえば。
アノ男。
見たことある。
昔、俺の絵をバカにしたやつだ。
ガンバッテ描いたのにあいつが台無しにシタんだ。
ズタズタに切られて可哀想な俺の傑作。
あいつの仲間も俺のコト。
ハ‥ハハ、アハハハ。
いい絵が描けそうな気がする。
俺は急いでキャンパスを出した。
次の日、とある公園で一枚の油絵が雪の上に置いてあったらしい。
その油絵は、恐ろしいほどに赤黒い。
だけど、とても芸術的で美しい油絵だ。
それは、殴られたように描かれた赤い月だった。
タイトル:ミッドナイト
1/26/2024, 2:10:51 PM