叶わぬ夢
叶わぬ夢を見ている。
数年前引退した彼女が戻ってくる夢を。
叶わぬ夢を見ている。
その、彼女の作った楽曲が聞ける夢を。
叶わぬ夢を見ている。
叶わぬ夢を見ている。
叶わぬ夢を見ている。
もし。
彼女が本当に戻らないというのなら。
その席が永遠に空席のままだというのなら。
私が代わりに座っても。
いいよね?
花の香りと共に
独特な花の香りと共にキミはやってきた。
澄んだ青空に複数の宇宙船を待機させて。
これから地球との貿易がしたいと言って。
地球の代表者たちは困惑して、同意した。
キミたちは地球にはない青い花をくれた。
花は地球上の生き物に強い幻覚を見せた。
みな食事も睡眠も忘れ幻覚に溺れ死んだ。
幻覚を見れなかった僕だけが生きていた。
キミたちは死体を無視して地球に降りる。
復讐なんて、僕の柄ではないんだけどね。
それでも、やらないわけにはいかなくて。
僕はどう動きべきだと思う、ご先祖さま。
宇宙人の技術で過去に文章が送ってます。
まあ、未来が変わるかはわからないけど。
宇宙人と仲良くしないでね。
心のざわめき
大丈夫だから。
その言葉を信じるしかなかった。
心のざわめきを無視するしかなかった。
私は動かなかった。
その結果が、娘の自殺だったとしても。
「だから、決めたんです」
目と口を塞がれ、椅子に縛りつけられた人影に言う。
「止まることなく、動こうって」
私は動画の撮影ボタンを押す。
ピロン、と軽やかな音がした。
これから始まるのは解体ショー。
娘を殺された親の復讐という名の自己満足。
心のざわめきはいつの間にか消えていた。
だってもう、私には心なんて無いから。
終わり、また初まる、
物事には必ず終わりが来る。
仕事も、趣味も、人間関係も。
だって人間は永遠に生きられないから。
けれど、終わるだけじゃない。
終わり、また初まる、その繰り返し。
だから僕が君の前に現れるのもまた必然。
何度生まれ変わったって、逢いに行くよ。
「天性のストーカーってことですか?」
呆れ顔だって君なら美しいよ。
嗚呼
「嗚呼」
「父は話すことができません」
「嗚呼」
「なので僕を間に入れてください」
「嗚呼」
「父は言っています」
「嗚呼」
「息子である僕にすべてを渡すと」
言ってない、言ってない。
そんなことは言ってない。
息子は笑ってる。
俺を見て、笑ってる。
これは俺の人生だ。
お前のものじゃ……。
「僕の人生をめちゃくちゃにしたお返しだよ」
二人きりの病室で息子は笑った。