『早く早く早く消えてしまえ
どうせもうまともじゃいられないんだから』
上記は有機酸という方の「quiet room」という
歌の歌詞の一部であり、僕がおそらく人生で
一番聴いているのはこの曲なのではないか、と思う
酷く落ち込んで、ただ自分の中だけを見つめていた時期
何も見たくなくて部屋を真っ暗にして
天井をただぼうっと見つめて
それでもこの曲をループ再生にして
1時間も2時間もずっと蹲っていた
賑やかなメロディーの中に
確かに寂しさが潜んでいて
それは多分、自分ではどうしようもない類のもので
声に出さなくても苦しいよ
幸せに罪悪感を感じてしまうよ
変わらないものがあるって信じていたいよ
そんな感情が聴こえてくるようで
ああ、なんて脆いんだろう
なんて似ているんだろうって
涙を流したこともあった
今やもうお守りのような曲
すっかり涼しくなりましたね
そちらはどうですか
ここよりはまだ暖かいのかな
この季節は過ごしやすいけれど
やっぱりどうにも苦手で
待ち構えている冬という終わりの季節の寂しさを
賑やかな食で無理矢理
誤魔化すような気持ちになってしまって
それでもやっぱり風は冷たくなっていって
寂しい、と素直に口にできてしまう
君に寄りかかって
ただダラダラとテレビを垂れ流していた
あの時間に戻りたい
僕が生きているのは確かにこの場所だけど
心はどこか遠くにあるようで
もうずっとそんな感覚で生きていて
昔誰かに言われた
「ずっと好きな人がいるんでしょう」って言葉を
ぼんやりと思い出した
窓と言われて思い出すのは
君の運転する車窓から見た
夜明けの東雲色の空
長期休みになると決まって
深夜に一緒にカラオケへ行って
気付くと世界は朝を迎えていて
慌てて夢から抜け出すように
二人して眠い目を擦って帰る
その時の空はあまりにも綺麗で
段々白んで時を刻んでいく空が
酷く残酷に思えて、少し憎いくらいで
こうして同じ時間を重ねていくことは
幸せなはずなのに同じ重さで怖くて
気を抜くと泣きそうだった
君に心に触って欲しくて
だけどそれはきっと酷い痛みを伴って
同時に僕らを引き剥がす事と同様で
判っているよ、って呟いて
曖昧なままで君の側を守っている
違う 自分を守っている
目に見えない約束や時間を
数えきれないほど重ねては
その度に君しか見えなくなって
怖いからまた約束をして
終わらせるのが怖いから
見えないように目を閉じている
君の匂いの中で
君の後ろを歩いていた
ぬるい風が強く吹く夜
たった一昨日の夜
もう二度とはやって来ない夜
君の赤い髪が揺れていた
振り返った君と目が合った
君は安心したように笑っていた
今この瞬間に死んでしまえばいいと願った
あまりにも幸せだったから
自分の時間を永遠に止めてしまいたかった
未来なんて見たくはなかった
風が強く吹いて
前髪で前が見えなくなった
君は先を歩いていた
人間が聴覚で得る情報は
たったの11%だって
その意味が痛いほど分かった
久しぶりに会った君は
僕の目をよく見るようになっていた
そして僕に何度も問いかけた
「きみはどうしたい?」と
その度に瞼の裏で過去の自分を想った
何をするべきか操るかのように
全て決められていた自分を想った
誰も言ってくれなかったその言葉を
こうも易々と言うのかと
本当は少し泣きそうだった
愛とは何だろうと
心の中で何度も問うた
君といつか結ばれる誰かの
愛の方が僕より強いだなんて
なんて理不尽なんだろうかと腹が立った
君の幸せを願いながら
君の願いが叶いませんようにと
祈る自分の小ささを殺めたかった
誰かが僕を見つめる視線を何度も感じた
そんなものに何の意味もないと思った
その中から僕が誰かを選ぶことは
きっとないだろうと苦笑していた