「うわー、すげえ綺麗」
「ホントじゃん」
今日は、二人とも暇で何もすることがなかったので久しぶりに僕の家近くの公園に訪れることにした。
公園なんて幼稚園児でもないからきてなかったけど、ひさびさにくるとやはり何か来るものがある。
「前はこんなのなかったよね」
そう指をさす先を見ると、一台の滑り台があった。
「確かに」
滑り台なんて、公園にあるものの中では定番だろうが、なぜかこの公園には滑り台がなかったのだ。
今思うと気になって仕方がない話だが。
「最近出来たのかな」
指先で軽く触れると、錆もなく、さらさらとした触り心地のいい新品のような滑り台だった。
「そうかもね…ねえ、滑らない?」
「お、やっちゃう?」
幼稚園児でもないけど、まだまだ子供なんだから、滑り台したって何ら不思議なことではない。
むしろ、滑る奴だって多いだろう。
「よし!いくぞー」
「こい!」
腕を上げて、うわーとわざとらしく声をあげながら滑り落ちるのをみてると、なんかほわほわしてくる。
なにこれ、何現象??
ま、どーでもいいか
「君って、変なとこあるよね」
「…俺?」
「うん」
雨が降り続ける日、急にそんなことを言われた。
「え、何急に?怖いんだけど」
「いや、別に…」
俯いて、足元の石ころを転がしながら唇を尖らせるソイツは、なんだかかくしごとをしているようにみえた。
「…ねえ」
「、なに」
手首を軽く掴むと、急な衝撃で驚いたのか肩をぴくりと震わせ、おそるおそるこちらを見る。
「なんか、隠し事してるんじゃない?」
ソイツは目を大きくして、石像みたいに動かなくなった。
「…そっちこそ、急に、何」
変な言い方をして、俺の手を振り払って睨みつけた。
「だって、いつものお前じゃないから」
「…なんだよ、いつものって」
ほんとだ。本当に、今日は調子がおかしい。
いつもだったら、ふざけて肩叩いて笑うような奴なのに。
じゃあ、なんで?
考えるのもめんどくさい。
勉強以外にはできるかぎり頭使いたくない。
それなのに
「…またこんどでもい?」
「は?」
財布をとりだして、近くに刺さっているビニール傘をとりだすと、びっくりした顔をして覗き込んできた。
「だから、また今度でもいっかって」
「…なんの話かしんないけど、別に良いよ」
傘を開く
「じゃ、かえろーぜ」
まあ、俺とお前なら、なんとかなるよね
どーにかなるでしょ
えー、今スマホを眺めているそこの君!
そう、君だよ。
せっかくだから、君に聞いて欲しいことがあるんだ!
こんな生活をしていると、話し相手なんて居なくてね。
俺たちは医者をしているんだけど、なんといっても新しい病原体を開発して人々に感染させ、それに適応したワクチンをつくり金儲けをするという医者なんだ!
どう?お金稼ぎにピッタリだと思わない?
俺たちは優秀すぎるが故に、仲間にも手放され、おたがい途方にくれていたときに出会ったってワケ。
あ、紹介をしてなかったね!
俺の相棒、×××。
俺と同じく優秀で、俺よりも医学の知識量がすごいんだ。
俺とあいつでは、得意とする分野が違うからそれぞれ自分の活かすべきところを活かせているんだ!
とってもいい関係でしょ?
まあ、あいつは今隣にいないんだけどね
約束をしたんだ。
え、どんな約束だって?
それは言えないよ、俺と相棒のふたりだけの秘密!
俺はずっと待ってるんだ。
だって絶対に約束は守ってくれるから。
え?なんでそう思うのかって?
そんなの簡単さ!
あいつは、俺の相棒だから
「ん、花」
「花…?なに、プレゼントでも言うんか」
「そうだけど」
「俺サプライズとか苦手って言うたやん」
「そうだけどさ」
「こーゆーのどうやって反応したらいいか分からん」
「別に、ありがとうで良くない?」
「俺そんな反応できないねん」
「まあ、アンタ反応薄いもんね」
「それただの悪口やろ」
「事実です」
「そうかもしれへんけど」
「これね、ドライフラワーにしてもいいんだって」
「ドライフラワー?あぁ、あの乾いた花か」
「もうちょっと言い方あるでしょ」
「…ふーん、そうなん」
「あ、話逸らした〜」
「うっさいわ」
「拗ねないでください」
「拗ねてません」
「うっそだあ」
「嘘じゃないわ、はよ歩け」
「歩いてるジャーン」
「はあ…」
「ま、ありがとさん」
「大切にさせてもらうわ」
「エッ」
「…なんや」
「アンタが、礼言うなんて…」
「阿保か、それくらい躾けられてるわ」
「躾けられてるわとかやめて??ちょっと語弊ある」
「ちょっとじゃないやろ、こんなん語弊にもならんわ」
「いやなるから」
「…ま、大切にしろよ!」
「そう言ってるやんけ」
「俺が一時間かけて選んだんだからな!」
「…それは大切にしなあかんな」
「当たり前!」
「ここやんな」
「え、こんな古びたぁー?」
「文句言うなや、ここしかないやろ」
「でもさぁー?こんなぼろぼろで」
「仕方ないやろ、ほら早く入りや」
「もー、仕方ないやんなっ!」
「エセやめろや、全然できてへんで?」
「うるせー!!」
「はいはい、はよ入り」
「あ、レディーファースト??」
「何言うてんねんお前ばりばりの男やろが」
「もお、なんでそんなこと言うの?」
「キショいのぉ」
「え、傷付く」
「勝手に傷ついどけや」
「うぇーん」
「…もうちょっとうまい泣き真似できへんのか?」
「おれっぴピュアだからあ」
「ピュア?何言うてんねん、そんなわけないやろが」
「そっかあ??そうなのかなあ?」
「あーもう、うるさいわ。はやく入るで」
「うん」
「なにこれ、地図?」
「地図やんな??なんでこんなところにあるんやろか」
「わかんねーけど、新しいね?」
「…、ちょっと貸してや」
「ん?いーけど」
「ありがとさん」
「なに?何かわかるの」
「………これ、俺ら詰んだな」
「え??」
「吸い込まれるで」
「え?って、えええええええええ!?!?」
「ちょっとっ、!服つかんどけ!!」
「うえっ!?おちてる、おちてるううう」
「うるっさいわ、黙ることもできへんのか!?」
「いやそんな状況じゃないでしょ!?」
「新しい地図ってこわい!!」
「そんな簡単に触れるもんちゃうやろ!?何勝手に触れてんねん!?」
「もーっ、うるさいよっ!!!離れちゃうから、暴れないで!」
「暴れてんのそっちやろが!とりあえず、受け身でも取れ」
「うん!!」
「骨折れても知らんで!?」
「え!?責任取れよ」
「なんでやねん」
「お前のためにここまできてやってんの、俺は!」
「そんなの知らん、…着きそうや、頭気をつけろ」
「うわあああああ!!」