NoName

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3/21/2025, 10:30:43 AM

「ねぇ!此処すごいよ」
君の手が、俺の腕を掴む。
君の周りはずっときらきらしていて、見たくないほどに、眩しい。
「そうだね、すごいねえ」
君の隣に寄って、反対の手で、頭を撫でる。
さらさらとした触り心地が良い。
それでいて、ちょっと癖毛なところとかふわふわしているところとかが好きなんだよね。
「もう!なんだよ、子供扱いしてるわけ?」
あぁ、いけない。子供扱いされていると感じたのか君は少し怒ってしまった。
「そんなことないよ。ただ、無邪気でかわいいなって」
目を見てそういうと、君は頬を紅色に染める。
「は!?そういうところだろっ、ばーか」
そう言いながら、繋いでいる俺の手をぶんぶんと振り回す。
頬をぷくーっと膨らませて、こちらをにらみつける。
本当に、可愛い。
また、君とこの景色を一緒に見れたら良いなあ。

3/20/2025, 5:40:04 AM

「…ん?」
ゆっくりと瞼をあけると、一気に太陽の光が差し込む。
真っ先に、白い天井が目に入った。
「病院?」
消毒液のような、ツンとくる匂いが鼻を刺激しているため、ここは病院なのだろう。
身体を起こすと、何かの機械が数機と、白く靡くカーテン。
さらに視線を落とすと、腕に点滴の針が刺さっていた。
「え、何これ。俺、入院してる?」
突然のことで意味がわからない。俺は入院するような病気をした覚えはないし、何か事故に巻き込まれた記憶もない。
急いで周りを見渡すと、棚の上にりんごがひとつ、置いてあった。ベットから慎重に出て、棚の前まで移動をすると、りんごの下に一切れの紙が見える。
「よいしょっと」
りんごをよけて、その紙切れをみると字が並んでいた。
字が汚い人が、頑張って丁寧に書いたような字だ。

『×××へ

突然のことで、何かわかってないと思うんだけどさ。
簡単に説明すると、×××は今入院してるの。
一ヶ月くらい、昏睡状態だった。
×××は頭を打ったから、記憶が少し混濁しているかもしれない。もしかしたら、俺のこと覚えてないのかもって、思うと怖いけど、×××ならきっと思い出してくれると信じてるよ!
ベットの横の服かけに外套が掛けてあるから、それを着て一階まで来て欲しい。
起きたばかりで、身体が痛むかもしれないけど、ちょっとだけ頑張ってほしいな。
俺は、そこで待ってる。』

これを書いている人は誰なのか、わからないけどとりあえず従うことにする。
振り返り、服がけをみると、確かに外套が掛けられている。
病院用だろうか、白くて手触りが良い。
すぐに手に取り、羽織る。
微かに身体が怠いような気がするけど、一ヶ月も眠っていたからだろうな。
正直、俺が一ヶ月も眠っていただなんて、信じられない。
こんな病院は来たことがないし、看護師の足音も、聞こえてくるはずの他の患者の話し声すら、一切聞こえない。
「なんか不気味〜」
俺は、点滴が掛けられているイルリガールド台を手に持って病室を出た。

「はー、広すぎじゃねえ?」
信じられないくらいに病院が広い。
俺が住んでいたところは、こんなに大きな病院なんて建っているわけなくて。
やっぱりなんか可笑しいなと思いながら、廊下を歩く。
やけに静かで、薄暗い。それでいて、病室の中は気味が悪いくらいに明るくて。
「何処なんだよ、此処」
その気味の悪さが、俺の鼓動を速くさせた。