鶴づれ

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9/10/2023, 8:12:55 AM

世界に一つだけ


「世界に一つだけのものって、なんだろう」
 帰り道、隣を歩く親友に問いかける。
 彼は詩を作るのが好きで、美しい言葉でも文学でも、たくさんの引き出しを持っている。そんな彼が知っている言葉を聞きたくて、引っ張り出した問いだった。
「世界に一つだけ…?なんだろう…」
 顎に手を当てて、彼は深く考え込む。
「…世界、とか」
 数分かけて、彼の答えを教えてくれた。
「世界?」
「そう。今僕らがいるこの世界って、これだけなんじゃないかな」
「並行世界の話とか、よく聞くけど」
「でも、それはこことは何かしら違うんだろう?同じじゃない」
 そもそも存在しているのかすら知らないしね。と、彼は付け加えた。
 世界に一つだけしかないものは、世界。確かに、面白い答えだ。
「なにか、不満そうじゃないか?」
 彼がにやりと笑って僕を見る。
「いや…。もっとこう、命とか、人生とかって言われるかと思った」
 むしろそれを僕に説明する彼の言葉の方に、興味があったのに。
「大きな目でみれば、生き物の命も人生も、どれも似たようなものだろう」
 彼は、はは、と笑いながら一蹴してしまった。
「…それこそ、世界からみれば?」
 僕がそう聞き返すと、彼はまた笑った。
「そうだな」
 僕もつられて笑った。

9/8/2023, 2:20:13 PM

胸の鼓動


 どくん、どくんと血が流れる音がする。

 胸は高鳴る、それでも頭はどこか静かだ。

 今日のために知識を蓄え、頭脳を磨いてきた。

 仲間を信じ、思いを託され、この舞台を目指してがむしゃらに走った。

 あとは、頂点を取るだけだ。

 この熱い心臓を抱えて、この冴えた脳を信じて。



高校生クイズによせて

9/8/2023, 9:04:45 AM

踊るように


 踊るように飛ぶ蝶が好き。

 自由で、美しく。繊細で、でも力強く。

 私は、そこまで自由じゃないし。醜く足掻くことしかできないし。ただ弱いだけだから。

 それでも。いつか。

 醜く足掻いて自由を得て。強くなって、誰かに優しくいられたら。

 蝶みたいに、なれるかな。

9/7/2023, 3:30:12 AM

時を告げる


 ゴーン、ゴーン、ゴーン…。
 古い振り子時計が厳かに時を告げる。
 今、三時になったのかと布団の中で思う。

 十二時に布団に入ってから、時計が鳴るのは三回目だというのに、全く眠れる気配がしない。どうしたものか。
 眠るのを諦めて活動しようにも、三時にご飯を食べて動画を見て、というのも不健康な感じがして嫌だ。

 …そうだ、もう一度時計が鳴ったときに起きていたら、諦めて朝ごはんを買いに行こう。四時なら早起きで許せる気がする。
 今日は休暇だ。早く起きたって、遅くまで寝ていたって、どちらでも構わないし。
 心地よい眠りを得ても、大好きな時計の音を聞いても。

9/5/2023, 1:33:18 PM

貝殻


 夏になると、ビニール袋をもって近くの海へ行く。

 裸足で砂浜を駆け回り、綺麗な貝殻を選んでビニール袋にしまう。

 白や紫、オレンジに黒。何に使うわけでもない貝殻を片手に、家へ走る。

 祖母に貝殻のはいった袋を見せて、綺麗だねと言ってもらう。

 二度と戻ることはできない、無邪気な夏の一日。

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