手を取り合って
君の幸せのためなら、それでもいいと思ってた。
君が、知らない誰かと手を取り合い歩いていく事実が、どうしょうもなく苦しいのに。
優越感、劣等感
「なぁ、アサガオってあるじゃん?」
放課後、教室でiPadとにらめっこしていると、向かいに座った彼が突然、そう呟いた。
「えっ、うん。そうだね」
iPadから視線を移して、とりあえず頷く。
「朝があるってことは、夜もあるのか?」
じっと私を見つめる彼の瞳には、好奇心がきらきらと宿っている。
「えっと、ヨルガオのこと?あるよ」
ほら、とスマホで検索した画像を彼に見せる。
「ヨルガオだけじゃなくて、ヒルガオもユウガオもあるよ。面白いよね」
「本当だ!すげぇ!」
私のスマホを手から奪い取り、簡単に見られる花の画像を、珍しい宝物のように眺め始めた。
頭がいい彼の、知らないことを知っていた。ちょっとした優越感に浸っていると、彼がスマホを私に返した。
「もういいの?」
「大丈夫!ありがとう、いい短歌ができそう!」
ニカッと笑って、彼はルーズリーフに短歌になりそうな言葉をメモし始めた。集中しているようで、もうなにも言ってくれない。
私の小説は、まだなにもないのに…。
これまでずっと
あれ?忘れてた?ごめん!
今日、一緒に帰ろうって、言ってたんだね。
いや、言い訳に聞こえるかもしれないけど、最近、すっごく忘れっぽいみたいでさ。
あんまり自覚はないんだけど…。
えっ?これまでずっと、一緒に帰ってた?
中学の頃からずっと?
いやだな〜。そこまで忘れっぽくないって!
それに、私達が出会ったのは高校に入ってからでしょ?
初めての日直、一緒にやって…。
え?それが中学の話…?
1件のLINE
LINEのKeepメモには、僕の目標がポンポンと一方的に送られている。目標を言葉にすると、ほんのちょっと、覚悟と勇気が乗ってくるから。
LINEの友だちの中から、緑色のアイコンをタップする。一つ、呼吸を置いて、できたばかりの目標を打つ。誤字がないことだけ確認して、送信する。
「いつか、君に好きだと伝える」
卒業までに、達成できるといいな…。
なんて思っていたら、メッセージの横に「既読」と表示された。あれ、これはKeepメモではなくて…?
改めて画面全体を見ると、目標の上には縦に二つ並んだ「よろしく」のスタンプ。
これは…。今日、君と交換したばかりのLINEじゃないか…!?
目が覚めると
目が覚めて、一番最初に見えるのは、私の部屋の白い天井。太陽の光にやんわり照らされて、ぼうっと明るいの。
次には、目覚まし時計かな。白い天井の後には、目覚まし時計の赤が眩しい。
あなたは、朝起きたらなにが見える?