優越感、劣等感
「なぁ、アサガオってあるじゃん?」
放課後、教室でiPadとにらめっこしていると、向かいに座った彼が突然、そう呟いた。
「えっ、うん。そうだね」
iPadから視線を移して、とりあえず頷く。
「朝があるってことは、夜もあるのか?」
じっと私を見つめる彼の瞳には、好奇心がきらきらと宿っている。
「えっと、ヨルガオのこと?あるよ」
ほら、とスマホで検索した画像を彼に見せる。
「ヨルガオだけじゃなくて、ヒルガオもユウガオもあるよ。面白いよね」
「本当だ!すげぇ!」
私のスマホを手から奪い取り、簡単に見られる花の画像を、珍しい宝物のように眺め始めた。
頭がいい彼の、知らないことを知っていた。ちょっとした優越感に浸っていると、彼がスマホを私に返した。
「もういいの?」
「大丈夫!ありがとう、いい短歌ができそう!」
ニカッと笑って、彼はルーズリーフに短歌になりそうな言葉をメモし始めた。集中しているようで、もうなにも言ってくれない。
私の小説は、まだなにもないのに…。
7/13/2023, 11:36:56 AM