脳裏
脳裏に焼き付いてはなれない、はなれない。
でも掴めない
貴方がいなくなった日、今でも想い出す。決していい人じゃなかったけど、僕に生きる意味をくれた。貴方から教わったこと、悪い事だったけど楽だった。同時に涙が出るほど辛かった。
夕日を見るたび想い出す
フェンスから落ちていく貴方
貴方が押し付けた普通の幸せを、
僕は笑顔で受け取れなかった
隣の席の少女はとても不思議
授業中は何時も、雲を見ながら小声で歌を(其時の雲の形を独特なリズムで)歌うし、体育のときはジャージ姿でファンタジー小説に出てくる踊子のように艶かしく舞う。何度か教師に注意されていたが、「ありゃ、迷惑やったかな……」とオニキス色の目を揺らしつつ、滑らかに視線を教師と合わせる。結局どんな教師もなぁなぁにしてまた授業を続ける。
悪気のない清らか、手も届かず触れようもない、僕にとってそういう存在。
今日も意味なく貴女を見つめてしまう
暗闇の中、少年は一人彷徨っていた
辺りに人影はなく、ただ木々が等間隔に並んでいた。ここはどこだ?早く家に帰りたいと思いながらただひたすらに少年は歩いた。彷徨っていた場所は丘と言っても言いような低めの山だったようで、歩き始めてから数分で無事、道に出てこれた。しかし歩道がない、辺り一面道路と畑だけだ。一応家もあるが一軒も光はついておらず、只々不気味でしーんとしていた。少年は焦った、どんな道を通って来たんだっけ?何故だか急に思い出せない。かゆいところに手が届かない?そんな気分だ。あー、不安だ。怖い怖い怖い。家に帰りたい。
家に、帰りたい。そうだよ、僕は家に帰りたいんだ。
あれ?そうだ、そうだった……そういや燃えたんだった、僕の家。僕の体ごと。
愛言葉
「愛を伝えるべき人なんて僕には一人もいないよ」
そう寂しそうに呟く少年を見ていたらなんとなく放って置けなくて、つい「人肌恋しくなったらいつでも電話してよ!」と、かるーく連絡先渡しただけなのに。
「人肌、恋しいんだけど今日もいい?」
(まさか今日もかけてくるとは)
「いいよ、お姉さんとたくさんお話しようね」
少年との毎夜の通話が一番の楽しみになるだなんて。私もけっこう寂しいんだなぁ。
「今日も人肌恋しぃーよ〜」
「わたしも〜」
「行かないで」
貴方の背ではなく、貴方の目を見て言いたかった。
雨の中走らないで、置いて行かないで、お願い傘だけでも差してよ。貴方が私より先に逝くだなんて考えたくないんだ。