真っ赤な薔薇の花束をポーンって投げてドカーンって爆発させたらひらひらって沢山のはなびらが虚空をかすめていくでしょ?
それが真っ赤なドレスがよく似合う貴方にぴったりだなっていうのは安易に想像ができたから、サプライズでやろう!って思ったの。でもいざ実行したらなんとその子泣いちゃって。
うーん…
でも そうよね。だって私、あなたと直接話したこと1度もないんだもん。残念だけど、あなたは私の事全然知らないもんね。
それにしてもあの子の泣き顔本当に可愛かったな。
これからも陰ながら応援してるね。
(影から)
#花束
#終わらせないで
雨が降り始めた。その激しい雨音はまるで私の心の叫びを具現化してくれたように感ぜられた。行き場のないこの苦しみ、怒りは全てこの雨音が引き受けてくれているようだった。私の中に潜む得体の知れない恐怖が目に見えたことで、私は幾分か心が軽くなった。
今日はいい日なのかもしれない。
雨が降り始めた。雨量が減り、小雨であった。
その静かな滴りはまるで私の苦悩に同情し、寄り添ってくれているようだった。身体に染み込んでゆく雨粒を見つめながら、私は口元に笑みを漂わせた。
今日は本当にいい日だ。
#愛情
私は昔から他人に興味を持つことが出来ないタチであった。なので恋人と言葉を交わしている最中、ふとした瞬間に興ざめする。"愛している"などといった歯の浮くような表現には軽蔑の念さえ感じる程である。
このように、私は実際に行う行為と自分の心情との乖離が凄まじい。そのような状態で、何故恋人と関係を続けているのか。
……。
とどのつまりは、私は恋する自分に酔いしれているのであった。人間らしい営みに憧れ、その体裁を上手に取り繕っている自分が誇らしくて堪らないのである。 なんと浅ましいのだろう。
しかし、しかし一言だけ言わせて欲しい。
これこそが人間らしさであり"愛情"では無いのかと。漫画に出てくるような純粋無垢で合理的な恋などはこの世に一切存在しない。あれはただの世間知らずの坊ちゃん達の物語であり、平々凡々な日々を送る私たちとは似ても似つかない、別次元の話である。
だからこそ、こういった我欲 故の行為は非常に非合理的だが、愛おしい。黒に染まりきらないその自己中心的かつ曖昧な"汚らしさ"を堪能することこそが、恋愛における醍醐味だと感じるのは私だけだろうか。
#落ちていく
机の上に広げられたノートには、漢字がびっしりと書かれている。これは来年行われる漢検2級に向けて勉強していたからだ。といっても取り組み始めたのは今日からなのだが。
そして目線を右側に移すと、漢検の問題集が閉じた状態で置かれており、その左横にはシャーペンと赤ペンが置かれている。この時点であることに気がついた人がいるかも分からないが、私は左利きである。なので問題集とペンの位置が右利きの人と逆なのである。
#子猫
朝起きると、少し離れたソファーで子猫が気持ちよさそうに眠っている。 私は欠伸をしながらベットを降り、子猫を起こさぬようなるべく静かにカーテーンを開けた。ふわっと柔らかな日光が部屋いっぱいに広がり、身体に当たる暖かい日差しと少し寒い空気感から朝が来たことを改めて実感する(を全身でかみ締める)。
大きく空気を吸い(ってから)、子猫を見た(一瞥した)。 子猫はピクっと片耳を動かしたかと思うと、目をぎゅっとつむり、肉球を手一杯広げて顔をごしごしと擦り始めた。 起きるのかと思ったが、まだ眠るらしい。
愛しいこの子の頭を撫でてから、私は朝の支度を始めた。