【二人ぼっち】
私はいつも独りぼっち。まぁ、俗に言う陰キャである。こんな私にも話しかけてくれる子がいる。同じクラスの中心的存在のRちゃんだ。小学校5年生からずっと同じクラスで、こんな私とずっと友達でいてくれる。ザ・陽キャって感じのRちゃんは、本当に誰に対しても分け隔てなく優しい。私はそんな彼女に密かに恋していた。
私は何も望んでぼっちを極めているのではない。過去にいじめられた経験があって、人と接するのが苦手になったからこうしてぼっちを貫いているのである。そのいじめられた原因は、私がレズビアンであることが関係していた。
いつだったか、まだRちゃんと知り合う前、好きな女の子に告白した。幼い子とは残酷で、まだ性教育のせの字も受けていない子にとって女が女を好きになることは『変』。だからイジメの対象になっていい。なんて思うものである。おかげで小中の友達はほぼいない。高校に入っても、Rちゃん以外とまともに話したことがない。Rちゃんはきっと、私がいじめられていたことは知っていても、いじめられた理由なんか知らない。だから危機感なく私に近づいてこれる。
そして、ようやく私はRちゃんを放課後呼び出すことに成功した。告白なんてしても無駄。そう分かっている。だって同性愛の話題をそれとなく出したときあまりいい反応をしなかったから。ならば、強硬手段に出るしかない。
Rちゃんが教室に残り、2人だけになる。
『いつも良くしてくれてありがとう。でも、ごめんね?』と言い、『怯えているRちゃん可愛い』と思いながら首を絞める。絞める。絞める。あぁ、冷たくなった。Rちゃんは死んだ。自分の腹にナイフを刺す。これで独りぼっちじゃない。
今日から、二人ぼっち。
【胸が高鳴る】
明日は待ちに待った日。もうすぐ、この苦しいのから解放される。もう嫌いなあの人たちに日ごろの感謝を伝えた。大好きなあの子にも感謝を伝えた。よし、すべて終わった。今から楽しみだ。
最近、自殺者が増えているらしい。死に方はさまざまだが、飛び降り、オーバードーズが多いとか。
『はぁ、こんなのが流行るなんて、世も末ね。』
『そうだね。』
『あぁ、下の子はこの流行りに乗ってもいいけど、お願いだからお兄ちゃんは乗らないでほしいわ』
『本当にそうだね。』
母と父のこんな会話を聞いてしまった。下の子。ボクのことだ。そんな呼び方、前までしてなかったのに。ボクも死にたい。この辛いのから解放されたい。明日。そうだ、明日だ。
朝起きると、隣に冷たくなった兄ちゃんがいた。母は壊れた。怒鳴って喚いて泣いて家の物全部壊した。ガラスの破片がそこら中に散らばってキラキラ輝いて見えた。その音で近所の人が通報したみたいで警察に連れて行かれてた。父は失踪した。父も兄ちゃんから聞いていたんだろう。朝起きたらそこに姿は無かった。ボクは逃げられなかった。どうしても兄ちゃんの最期を見たかったから。
ボクは施設にはいることになった。楽しみだ。もう言いなりの父はいない。苦しそうに勉強する兄ちゃんもいない。あんな母はいない。兄ちゃんと比べて否定してくる母はいない。酒に溺れて殴って暴言を吐く母はいない。女が男の格好をすることを否定する母はいない。どうしよう。家族がいなくなったのに、兄ちゃんは死んで父は失踪して母は警察に連れて行かれたのに、どうしようもなく胸が高鳴る。
【不条理】
真面目に生きれば報われると思っていた。
母はよく『優しくなりなさい』と言った。
父はよく『強くなりなさい』と言った。
先生はよく『真面目に生きなさい』と言った。
すべて信じた。だから、すべて守った。優しく、強く、真面目になった。でも、『幸せ』なんて感じれなかった。
一体、私にはどれだけ友達と呼べる人がいるだろうか。
あいつも、あいつも、あいつも、みんな自分勝手で弱くて不真面目。でも、そっちの方が楽しそうだ。みんな『幸せ』そうだ。ずるいじゃないか。こっちは大人の言うこと全部聞いて生きてきたのに。理不尽にも耐えてきたのに。あんなやつらいなくなってしまえばいい。そのほうが報われるだろう。私も、君も。
これを唯一の友達に話したとき、『辛』そうな声で『可哀想』なんて言われた。君のほうが今『可哀想』な顔をしている。なんで泣きそうな顔をしているんだ。
きっと全員が優しく、強く、真面目なら私は今『幸せ』だ。逆に、私含め全員が自分勝手で弱くて不真面目なら私は今『幸せ』だ。なら、後者のほうが圧倒的に楽ではないか。なのになぜ父も母も先生もあんなことを言ったのか。これでは私が一番『可哀想』ではないか。