降りしきる小雨の中、私は唐傘をさしながら、家路を歩いていた。
村から町へ買い出しと売り物の野菜を売るために来たのだが、急に雨が降ってきた。
その途中、弱々しい鳴き声が聞こえた。ふと横を向くと、雨で濡れた子猫がいた。
ひとりぼっちなのか母猫を探しているのかしきりに弱々しく鳴き声を上げていた。
あなたも一人…なのね。ふと、自分の心情と重ねたが、自分の家では飼えない。
あの時貰った唐傘…今はいない大切な人のことを思い馳せつつ、子猫の上に自分の唐傘を置いてみた。
子猫は鳴き声を止め、ふと私の方を見始めた。黒い瞳。まるであの人のよう…。
そう思っていたら、雨が止んだ。後ろを振り返ると、私に想いを馳せている人がいた。
心配して来てくれたのだろうか? その人は息を切らしていた。帰ろうと言われ、私は小さく頷いた。
私はふと後ろを振り返ると、唐傘と子猫は消えていた。
哀愁が漂う君の後ろ姿に僕はきゅっと胸が張り詰めた。
悲しそうな顔をする君の顔を見ると、不思議と感情が同調して僕も悲しくなる。
どうしたの? と声をかけても君は何も答えず首を振り、何も無いようかのように微笑んできた。
無理して笑っている君に僕は咄嗟に君を抱きしめた。君はおどおどして抱きしめ返そうか悩んでいた。
今にも消えそうに感じる君に僕は恐れを感じた。消えないでくれと呟き、そっと抱きしめるのをやめると、目の前には静かに涙を流す君の姿があった。
僕は慰めるようにそっと優しく君を撫でた。
私の理想郷…平和に穏やかな世界でみんなが優しいと良いな…。
そうあなたの問いに私は答えてみた。逆に質問をしてみると、君がいる世界が僕の理想郷だよ。と答えた。
私は本当?と疑っていたらふわりと撫でられ、嘘じゃないよ。嘘つく理由ある?
と、少し不満げに言われて私は首を大きく首を振り、なんだか当たり前な自分の答えが恥ずかしく感じた。
そんな私の様子に君は不思議そうに見ていたのでどうしたの?と聞かれた。私は一瞬間を置いて、
私の本当の理想郷は君が優しく微笑んでくれる世界が理想郷だよ。
と、答えてみた。なんだか顔は熱っている感じがしたが、君は優しく微笑んで私を優しく包み込んでくれた。
ありがとう…そう私は呟いてみた。
久しぶりに夢を見た。
誰に対してかは不明だったか、必死に行かないでと自分が泣き叫んでいる夢だった。
夢から目覚めると、もやもやとした気持ちでなんとも言えない気持ちで起きた気がしない。
そういえば今日はお盆の日だったな。旅立ったあなたに対しての行かないでと言っていたのだろうか。
ふと、そんなことを考えながら、未だにあの時の後悔を思い出してしまった。
いつまでも罪を背負う自分にどこか胸が締め付けられる気がした。
晴れ渡った快晴の空と心地よく優しい暖かな風。
私はその空間を気持ちよさそうに感じていた。
ふと空を見上げると、さらに風が強くなった。
ああ。君が吹かせたのかな…。
どこか懐かしさが胸に込み上げた。目を閉じてその気持ちを身に沁みて感じていたらふわりと後ろから誰かに抱きしめられていた。
大丈夫。僕がいるから安心して?
そう君は私に話した。私は自然と涙で視界が揺らいだ。