「街へ行こう。」
ズキッ
なぜ貴方がその言葉を口にすると私はこんな気持ちになるのだろう。
「あっ…はい。
言ってらっしゃいませご主人さま。」
「護衛は?
私が行きましょうか?」
「いやいい。」
「…はい。」
「父上,行ってまいります。」
「ん?
その子と一緒に行けばいいじゃないか。」
「!」
「!」
「一人で行きます。」
「…はい。」
「?」
「?」
「街で何をしてくるのだ?」
「デートを」
ズキッ
「!?」
どうして?
私に内緒で
彼女ができていたのですか?
言ってくれればよかったのに。
「おお
彼女さんを大切にな。」
「んー
カレシ?」
え?
「どういう?」
「えっ?
そのままの意味。」
ズキッ
「そうですか。」
「じゃあ
待たせると悪いから。」
「行ってらっしゃいませご主人さま。」
ガチャ
コッコッコッ…
ガチャ
顔が見えなくなる。
あぁどうして?
「うっ」
ハァハァハァハァ
なに…これ?
「どうした?
大丈夫か?」
「大丈夫…です。」
バタ
「おい!」
「あいつを呼び戻せ!」
「父…上?」
「えっ?」
「おい!
どうした?」
「父上!
どうしたんですか?」
「きちんと面倒を見ておいてくださいよ。」
「うっ。
すまん。」
「すいません。」
「で?
どうしたんですか?
容体は?」
「えー。
寝不足による,貧血だと思われます。」
「良かった。」
街へ行こう。
この娘と一緒に。
優しさなんてただの綺麗事。
優しさで溢れた世界=綺麗事で溢れた世界
ということだろう。
なぜ?
なぜ私が?
こんな目に遭わないとイケナイの?
あぁもうこんな世界終わってしまえ!
そして私は,屋上に立つ。
これで死ねる。
キャーー!
えっ?
どこ?
ここ?
貴方は優しい人間です。
…?
は?
優しさで人が死ぬこともあるっていうのに!
急に眩しいほどの光が視界いっぱいに広がった。
テーマ『逆光』
ここは何処だろう?
急に視界が光に包まれて…?
異世界か何かだろうか?
死んだのだろうか?
でもなぜ?
私は,テレビを見ていたのだ。
誰もいない静かなリビングで。
今日は,アイドル特集が放送されていた。
その中であるグループに興味を持った。
それは,友達のお兄ちゃんが所属しているアイドルグループだった。
その中でも,16歳のナオトくんが自分の推しだった。
グループの特集を見ていると,
急に部屋中が光りだした。
ここは何処だろう?
急に視界が光に包まれて…?
異世界かなにかだろうか?
死んだのだろうか?
でも見たことがあるようにも思える。
そこには,人が居た。
男の子が居た。
ナオトくんが居た。
今,世界中で光を浴びている人気者の。
どうして?
とても眩しい。
こんな夢を見た。
−ある暑い夏の日
塾に行く途中。私は,息をするのを忘れた。
同じくらいの年齢の女の子が包丁を向けられて悲鳴を上げているのだ。
周りの人はスマホのカメラアプリで動画を撮っているだけで何もしない。
(助けなきゃ!)
そう想うのに身体が…動かない!
男子高校生の軍団が来た。
「えっ?
ヤバくない?」
と言っているのが見えるが何もしようとしない。
男が包丁を振り上げた。
「!!」
とっさに体が動いた。
「大丈夫?」
聞くと,
「危ない!」
そう言う。
何がなんだか分からないが女の子が助かって良かった。
頭に強い衝撃が走る。
商店街が一瞬で悲鳴でいっぱいになる。
皆
「救急車!」
など
「大丈夫?」
と聞いてくる。
少し時間が経った。
頭がくらくらしてきた。
(やばい!)
眼の前が真っ暗になった。
−気付いたら病院のベッドの上に居た。
ベッドの横には泣いているあの女の子がいた。
何故泣いているんだろう?
男の子も居た。
この男の子は,最後に見えた男の子だ。
男の子は
「良かった!良かった!」
と言うし,意味がわからない。
医師が来た。
「助かったか。
危なかったんですよ。」
「えっと…?」
シンプルに意味が分からなかった。
−ここで夢は終わった。
起きるとそこは
“病院のベッドの上”だった。
“特別な夜”と聞いたら皆は何を思い浮かべるだろう。
一言で表したことには沢山の思い出が詰まっていることだろう。
一人ひとりの思い出は他人には読み解くことは出来ないのかもしれない。
でも,考えることで解ることもあるだろう。
考え,他人に想いを伝えることが許されているのが人間だ。
皆は沢山考え,伝えることを辞めないでほしい。