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「街へ行こう。」
ズキッ
なぜ貴方がその言葉を口にすると私はこんな気持ちになるのだろう。
「あっ…はい。
 言ってらっしゃいませご主人さま。」
「護衛は?
 私が行きましょうか?」
「いやいい。」
「…はい。」
「父上,行ってまいります。」
「ん?
 その子と一緒に行けばいいじゃないか。」
「!」
「!」
「一人で行きます。」
「…はい。」
「?」
「?」
「街で何をしてくるのだ?」
「デートを」
ズキッ
「!?」
どうして?
私に内緒で
彼女ができていたのですか?
言ってくれればよかったのに。
「おお
 彼女さんを大切にな。」
「んー
 カレシ?」
え?
「どういう?」
「えっ?
 そのままの意味。」
ズキッ
「そうですか。」
「じゃあ
 待たせると悪いから。」
「行ってらっしゃいませご主人さま。」
ガチャ
コッコッコッ…
ガチャ
顔が見えなくなる。
あぁどうして?
「うっ」
ハァハァハァハァ
なに…これ?
「どうした?
 大丈夫か?」
「大丈夫…です。」
バタ
「おい!」
「あいつを呼び戻せ!」
「父…上?」
「えっ?」
「おい!
 どうした?」
「父上!
 どうしたんですか?」
「きちんと面倒を見ておいてくださいよ。」
「うっ。
 すまん。」
「すいません。」
「で?
 どうしたんですか?
 容体は?」
「えー。
 寝不足による,貧血だと思われます。」
「良かった。」
街へ行こう。
この娘と一緒に。

1/29/2023, 7:00:26 AM