ヴェルサーレ・ラクリメ
私は祈り続ける
時の神が微笑んでくれるまで
ざわめく風がライ麦畑を洗っていく
黄金色に輝く海にたたずんで啜り泣く
雨雲でさえも美しく思える
礼拝堂の庭の長椅子に腰掛けてライ麦畑を見る
私は祈る
時の流れが慈悲をもたらしてくれるまで
私の魂は虚空に向かって叫ぶ
それはどこに届くかも分からない
どこにも届かず、泡となって消えてしまうだろう
この身体が朽ちても構わない
雨は私の涙を吸収して、地に落ちていく
私は狼に恋をした
群れから外れた一匹の狼に
彼は私に子を授けた後、戦いの中で死んだ
時の神は歯車を止めてはくれなかった
貴方は勇敢に戦った
私と私たちの子のために
でも、私は啜り泣くしかない
ペイン・メディケーション
僕らは罪人で狂人。
癒えない傷を負っている。
顔のない人間の街で生活している。
氷のビルの谷間を走る安っぽい車。
心は麻袋の中で干からびた。
ナイフでつけた傷口から滴るのは汚水。
僕らはくたばるまでこの地獄を歩き続けるんだ。
金儲けしたところで、何も満たされない。
世界を呪えばいい。
コンクリートの上で火だるまになればいい。
ここは地獄でしかないのだから。
痛み止めはただのその場しのぎに他ならない。
怒り。
殺意。
静寂。
愚者。
崩壊。
立ち上がってみろ。
すぐに倒れてしまうのがオチさ。
ピストルに弾を込めろ。
奴らを追放しろ。
ここから飛び降りてしまえ。
耳をふさげ。
目を閉じろ。
息を止めて、暗黒の海に沈んでしまえばいい。
地球ごと。
この地獄ごと。
僕らはどうせ幸せになんかなれっこないんだ。
エナジー
水の中にいる
私は日の光を反射した水の中にいる
ぼんやりと世界が見える
青い世界には無数の魚たちが泳いでいる
呼吸を止める必要はない
水の中にあるのは私の意識なのだから
お願い
私を底へと連れて行って
活力が溢れているの
お願いよ
私はマーメイドじゃない
だけど泳ぎたくて飛び込んだの
水の中は温かい
そして懐かしい匂いがする
私は肉体から飛び出して泳ぎ続ける
平和な水の世界を旅する
活力が溢れているの
活力だけが水流のように押し寄せてくるのよ
時を止めて
そして委ねて
ラストスパート
来年こそ、人生の最期にしようと思う。
もう充分生きた。
今、死神が俺の前に現れても絶望しない。
むしろ、子供みたいにはしゃぐだろう。
家族には悪いが、僕はもう生きていたくない。
いろんな人と出会った。
いろんな美味しいものを食べた。
いろんな世界を見た。
叶わぬ恋もした。
ひどいこともした。
たまに親切になったりもした。
俺は今、死に憧れさえ抱いている。
死はきっと温かくて恍惚。
生まれる前のあののどかな世界に還るだけ。
俺の21グラムの魂は約束の場所へと行くだろう。
幽霊になったとしても、構わない。
一つだけ、未練があるとしたら。
俺は女の子になりたかった。
無題
『死にたいくらいなら、死ぬ気でやればなんとかなる』
なんてバカなことを平気で言う人間がいる。
死にたいのにやる気なんかでるもんか。
『自殺は生きたくても生きれなかった人への冒涜だ』
なんてバカなことを平気で言う人間がいる。
世の中には死にたくても死ねない人がいるのに。
『死ぬな、生きろ』
笑わせるな。
生きたい人に『死ね』と言っているのと同義であることを自覚してないのか?
『死にたいなら死ね、さっさとやれ。できないんだろ? だったら黙って大人しく生きてろ』
畜生。
畜生。
畜生。