John Doe(短編小説)

Open App
1/1/2024, 2:51:23 PM

エナジー


水の中にいる
私は日の光を反射した水の中にいる
ぼんやりと世界が見える
青い世界には無数の魚たちが泳いでいる
呼吸を止める必要はない
水の中にあるのは私の意識なのだから
お願い
私を底へと連れて行って
活力が溢れているの
お願いよ
私はマーメイドじゃない
だけど泳ぎたくて飛び込んだの
水の中は温かい
そして懐かしい匂いがする
私は肉体から飛び出して泳ぎ続ける
平和な水の世界を旅する
活力が溢れているの
活力だけが水流のように押し寄せてくるのよ
時を止めて
そして委ねて

12/30/2023, 11:32:55 AM

ラストスパート


来年こそ、人生の最期にしようと思う。
もう充分生きた。
今、死神が俺の前に現れても絶望しない。
むしろ、子供みたいにはしゃぐだろう。
家族には悪いが、僕はもう生きていたくない。

いろんな人と出会った。
いろんな美味しいものを食べた。
いろんな世界を見た。
叶わぬ恋もした。
ひどいこともした。
たまに親切になったりもした。

俺は今、死に憧れさえ抱いている。
死はきっと温かくて恍惚。
生まれる前のあののどかな世界に還るだけ。
俺の21グラムの魂は約束の場所へと行くだろう。
幽霊になったとしても、構わない。

一つだけ、未練があるとしたら。
俺は女の子になりたかった。

12/30/2023, 5:11:23 AM

無題


『死にたいくらいなら、死ぬ気でやればなんとかなる』
なんてバカなことを平気で言う人間がいる。
死にたいのにやる気なんかでるもんか。

『自殺は生きたくても生きれなかった人への冒涜だ』
なんてバカなことを平気で言う人間がいる。
世の中には死にたくても死ねない人がいるのに。

『死ぬな、生きろ』
笑わせるな。
生きたい人に『死ね』と言っているのと同義であることを自覚してないのか?

『死にたいなら死ね、さっさとやれ。できないんだろ? だったら黙って大人しく生きてろ』
畜生。
畜生。
畜生。

12/28/2023, 11:39:23 AM

ハウ・キャン・アイ・ビー・シュアー?


女の子たちは、いつも自由だった。
なぜなら、背中に翼が生えていたから。
彼女らは、何も恐れるものがなかった。
『自分たちは永遠に子供だ』
誰もがそう信じて疑わなかった。
大人の女は汚れている。
汚らわしい、大人になんてなりたくない。
大人の背中には翼がないもの。
銃撃も、爆撃も、国境も、民族もない。
女の子は、いつだって魔法の力を持っている。
巨大な黒い雲が世界を覆っても大丈夫。
彼女らは雲の上の世界で茶会をしているから。
『私たちは空から来たんだよ』
だけど、女の子はお母さんが大好き。
大人の女でも、お母さんだけは特別。
でも女の子の国にお母さんは入れない。
強暴な蛇が大人を食べてしまうから。

どうして私はそう思えるんだろう?
ここには、目を覆いたくなるような重なり合う死、死、死、死、死。

12/23/2023, 9:14:33 AM

メモリーズ


君は出ていった
ある日突然僕の側から去っていった
教えてくれないか?
僕に何ができたのかを
君は知っていたはずだよ
僕が泣き虫なのを知っていただろう?
僕が弱虫なのを知っていただろう?
僕が本当に傷つきやすいヤツだって知っていたはず

君は帰って来ない
もう何もかもが空っぽなんだ、あるのは残り香だけ
教えてくれないか?
僕に何ができたのかを
僕は信じていたんだよ
君がいつも僕の側にいてくれることを
君が実は繊細な心の持ち主だってことを
君が心の底から幸せを願っていたことを

もう泣き疲れたよ
それなのに涙はまだ止まらないんだ
君は白い箱の中で笑顔に眠っている
君の大好きだった花を添えた
ねえ、僕はどうすればよかった?
ねえ、これから僕はどうやっていけばいい?
教えてくれないか?
何が君を遠くの国へ連れて行ったのかを
僕もそこに行けば君と再開できるのかを

いつまでも泣いてちゃいけないよな
君もきっとそれを望んじゃいないよな
分かってる
分かってるよ
だけどお願いだ
いつまでも僕のことを忘れないでおくれ
この弱虫で泣き虫な僕のことをさ

Next