John Doe(短編小説)

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12/21/2023, 8:07:54 PM

ウィズ・ユー・イッツ・オーケイ


気付かせてくれてありがとう
気付かせてくれてありがとう
それはとてもシンプルなことだったんだ
それはとても小さなことだった
教えてあげてほしい
教えてあげてくれ
君ならきっとそれができる
君なら大丈夫だと思えるんだ
なんて暖かい陽だまりだろう
なんて優しい手のひらだろう
気付かせてくれてありがとう
気付かせてくれてありがとう
今、僕の心はクリアーなんだ
君のおかげだよ
君は聖母
君は救世主
なんて暖かい陽だまりだろうね
なんて優しい手のひらをしてるんだ
気付かせてくれてありがとう
気付かせてくれてありがとう
過去の僕にも教えてあげて
『君となら大丈夫』だとね

12/20/2023, 10:21:17 AM

ドラッグス


果てしない空虚。
虚無感。
無力感。
寂寥の世界。
停止した時空。
失われた欲望。
廃墟。
振動。
氷山。
炎。

12/19/2023, 11:41:48 PM

カード


開いた蓋は    二度と     閉じない
砕けた      星に      祈る
タバコの煙    銃口の煙    松明の煙
お前は      臆病者     裏切り者
お前は      恥知らず    躁鬱病
テーブルの上   散らばった   カード
真昼の夢     バルコニー   光
ブルーシート   金庫      誰かの吸殻
日焼けした本   コップの花   麻の匂い
お前は      愚者で     病的
お前は      反逆者で    嘘つき
カードを     混ぜて     引け
運が       味方      してくれる
お前なら     いつも     そうする
逃げてもいい   逃げろ     逃げろ
逃げるんだ    今すぐ     ここから
ここは      お前に     必要ない
ここは      俺にも     必要ない
ここは      誰にも     必要ない

 

12/18/2023, 10:27:24 AM

エクスプロレイション


今から何百年も前のことさ
『東の果てに黄金に満ちた大陸がある』
誰かがそう言い出したのさ
西の外れの国々の船は競うように海に駆り出す
やがて新大陸を次々と発見しては
七つの海はすべて一枚の紙面に記されたのさ
ピラミッドにスフィンクス
ソクラテスにアリストテレス
始皇帝にチンギス・ハン
はるか東の列島
本を開けば歴史はいつだって平べったい顔
だけど僕らの夢見た大航海は
ただの略奪と虐殺の繰り返し
コロンブスは英雄? それとも犯罪者?
さあ、今度は僕らの番だ
地球という王国から、新大陸を目指して宇宙へ飛び立つのさ

ガガーリンが英雄になる日はそう遠くないかもね


12/17/2023, 11:54:57 PM

アイスランド


凍てつくような真冬の冷気に曝されながら、僕は学校から帰っていた。ここ、エストニアの首都タリンでは名門校が集まるいわゆる学園都市なのだが、ソ連の構成国だった頃はそれほどのものじゃなかった。まあ、僕が産まれる前にその大国は崩壊し、今やすっかり欧米的な国として変わっちゃったわけなんだ。

「アイスランドってここより寒いのかな?」とユハンはフライトジャケットのポケットに両手を突っ込みながら白い息を吐いて言った。
「さあ、“アイス”ってくらいなんだから、氷で覆われた国なんだろうよ、きっとね」
「へえ。俺は“アイスクリームが食べ放題の国”って意味じゃないかと思ってたよ」
ユハンの冗談は本当につまらないんだな。なのに、一人でクスクス笑ってやがるんだ、こいつがさ。
「いやあ、こうも寒いと本当に気が滅入るよな。俺もちょっと鬱っぽいんだよ」と僕は話題を反らした。
「寒いと鬱になるのか?」
「知らん。ただ、何となくさ。こうも寒いとロクなことを考えないんだ、俺。例えば学校の近くに橋があるだろう? あそこから飛び降りようかなんて思っちまうんだ。わかるかい?」
ユハンは僕の話を面白くなさそうに聞いていた。それから、いきなり道端に唾を吐いた。
「おい! 汚いことはやめろ!」
「だってお前がつまらないことぐだぐだくっちゃべってるからよ。反吐が出ちまったんだ」
「ならお前が何か面白い話してみろよ」
「ああ、いいとも。あるところに、“アイスクリームが食べ放題の国”がありました。国民はみんなアイスクリームが大好きで、国名を“アイスランド”に…」

雪が降り始めた。そういや雪って汚いんだよな。大気中のチリやホコリが含まれてるとかなんとか。ユハンはというと、話ながら雪を食べたんだ。ばっちいなと思いながらただ、彼のアイスランドの話をずっと聞いていながら、もうすぐクリスマスだなとか考えて、ひたすら凍てつく舗道を歩いていた。

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