オレンジジュース
朝日が差し込む部屋で
飛び起きて大あくび
なんか嫌な夢見てたけど
切り替えていこうぜ
今日はまだ始まったばかりだ
昨日のことまだ怒ってる?
それなら謝るよ悪かった
テレビの天気予報は晴れだ
そんな顔するなよ
良い一日にしようぜ
焼きたてのパンと
冷たいオレンジジュース
幸せと活力と希望は
その暖色の液体に溶けていくのさ
キックボード
母さんに買ってもらったキックボードに乗る
やわらかい風を切って、走り出す
ネクタイがたなびく
深夜の道路をとばして走る自動車
ヘッドライトが僕を照らす
頭の中に駆動音が反響している
ひたすら地面をキック、キック、キック
今日は母さんの命日
朝日がかすかに世界を照らす
家に向かって、ひたすらキックする
ユートピア -理想郷-
死後の世界があるかなんて、実際に死んでみないと分からない。
死者が口を開き、そこがどんな場所だったかわたしに教えてさえくれればいいものだが。
それは叶わない。絶対に。
はるか太古から、あらゆる生命体は死んでいった。
数えきれない、星の数ほどの生命体が。
人間はどうやら他の動物よりも賢いそうで、死を恐怖する意識が備わっている。
そして、死という絶対に逃れられないイベントの恐怖から逃れるべく宗教を信じたりした。
また、死を最終手段として使って苦痛から逃れた者もたくさんいた。
もしもエデンや極楽があるとするなら。
そこにわたしの家族や知り合いがいるなら。
そこは人類の、あらゆる生命体にとってのユートピアに違いない。
わたしはそこへ行けるだろうか?
悪い子は地獄へ堕ちるのかな?
もしも死が無への入り口なら。
無こそが理想郷なのではないだろうか。
こうしている間にも、わたしは死へと確実に突き進んでいる。
100年後の世界に、わたしは居ない。
わたしが死んだら。
わたしの魂はどこへ行くのだろう?
ユートピアだといいな。
肉体を捨てて、自由になるなら、どこへ行こう?
逢いたい人がいる。
見たい場所がある。
戻りたい時間がある。
わたしが死ねば。
存在がこの世界から消えるだけ。
それは避けられないイベント。
『こんなハズじゃなかった』
「こんなハズじゃなかった」
私は何度そう思ったことだろう。
慌ただしい人生を過ごしてきたが。
私は何一つ手に入れられやしなかった。
ただ、太陽が輝いていただけだった。
それが人並みの幸せだったのかもしれない。
しかしこの虚無感は何なのだ?
すべてが憎い。
すべてが哀しい。
こんなハズではなかったのだ。
私は努力したはずだ。
私は苦しんだはずだ。
努力と苦しみの上に今があるのだ!
しかしなぜ!
こんなに虚しいのか!
私はただ、素敵な人と家庭が欲しかっただけだ。
ただ、ただそれだけだったのだ。
こんな絵など、何の価値もない。
こんな詩など、読むに値しない。
こんな私など、こんな芸術家など。
1999
どんなに時を繰り返せば
あの頃に戻れるでしょう
昔話でもしようか
切なくなるだけか
やっぱりやめよう
色褪せた写真をそっと胸に抱く
あなたと過ごした日々は粉々に砕け散って
いちばん可哀想なのは私でした
砂時計を逆さまにすれば
色は甦るでしょうか
潮風のように私は飛んでいきそう
結局あの年、世界は終わりませんでしたね
わかってたはずだったのに
数十年後も、私はわたしなんだと。