John Doe(短編小説)

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ユートピア -理想郷-


死後の世界があるかなんて、実際に死んでみないと分からない。
死者が口を開き、そこがどんな場所だったかわたしに教えてさえくれればいいものだが。
それは叶わない。絶対に。

はるか太古から、あらゆる生命体は死んでいった。
数えきれない、星の数ほどの生命体が。
人間はどうやら他の動物よりも賢いそうで、死を恐怖する意識が備わっている。
そして、死という絶対に逃れられないイベントの恐怖から逃れるべく宗教を信じたりした。
また、死を最終手段として使って苦痛から逃れた者もたくさんいた。

もしもエデンや極楽があるとするなら。
そこにわたしの家族や知り合いがいるなら。
そこは人類の、あらゆる生命体にとってのユートピアに違いない。
わたしはそこへ行けるだろうか?
悪い子は地獄へ堕ちるのかな?
もしも死が無への入り口なら。
無こそが理想郷なのではないだろうか。
こうしている間にも、わたしは死へと確実に突き進んでいる。
100年後の世界に、わたしは居ない。

わたしが死んだら。
わたしの魂はどこへ行くのだろう?
ユートピアだといいな。
肉体を捨てて、自由になるなら、どこへ行こう?
逢いたい人がいる。
見たい場所がある。
戻りたい時間がある。

わたしが死ねば。

存在がこの世界から消えるだけ。

それは避けられないイベント。

5/29/2023, 8:49:24 AM