John Doe(短編小説)

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5/27/2023, 10:17:59 AM

『こんなハズじゃなかった』


「こんなハズじゃなかった」

私は何度そう思ったことだろう。
慌ただしい人生を過ごしてきたが。
私は何一つ手に入れられやしなかった。
ただ、太陽が輝いていただけだった。
それが人並みの幸せだったのかもしれない。
しかしこの虚無感は何なのだ?

すべてが憎い。
すべてが哀しい。
こんなハズではなかったのだ。
私は努力したはずだ。
私は苦しんだはずだ。
努力と苦しみの上に今があるのだ!
しかしなぜ!
こんなに虚しいのか!

私はただ、素敵な人と家庭が欲しかっただけだ。
ただ、ただそれだけだったのだ。

こんな絵など、何の価値もない。
こんな詩など、読むに値しない。

こんな私など、こんな芸術家など。

5/23/2023, 10:51:16 AM

1999


どんなに時を繰り返せば
あの頃に戻れるでしょう

昔話でもしようか
切なくなるだけか
やっぱりやめよう

色褪せた写真をそっと胸に抱く
あなたと過ごした日々は粉々に砕け散って
いちばん可哀想なのは私でした

砂時計を逆さまにすれば
色は甦るでしょうか
潮風のように私は飛んでいきそう

結局あの年、世界は終わりませんでしたね
わかってたはずだったのに
数十年後も、私はわたしなんだと。

5/19/2023, 10:19:42 PM

ナイン・ミリ・パラベラム・カートリッジ


私はいわば炸薬である。
私は一人の兵士である。
己の任務を着実に遂行し、パトリオティズムの元、国家に代行し、引き金を引く。
私は戦士である。
私は国家の矛であり、盾である。
私は核弾頭であり、銃弾であり、この星の害悪そのものであり、悪意の権化であり、狼煙である。

戦争は人間が行う。
戦争は国家が行う。
銃は個人の盾となり、矛となる。
核弾頭は国家の盾となり、矛となる。
銃弾から核弾頭まで、あらゆる兵器が揃い、『敵』を牽制する。
平和を希求する者、戦争を望むもの。
私はただの銃弾に過ぎない。

5/18/2023, 10:49:56 AM

あなたに愛を伝えるとき


髪が全部白くなって
しわくちゃの顔になって
目もあまりよくなくなって
昔の面影がなくなってしまっても
あなたを愛すよ
あなたが僕より先に星になってしまったとしても

どんなに世界が悲惨なものに変わっても
あなたと歩んでいけるなら
そしてあなたが星になったとき
僕もあなたの隣で輝く星になる
死が全てを壊すなんてあり得ない
僕らは死をも超越してやるんだ



この想いを、すべての気持ちをあなたに伝えるとき

これらを「愛」と一字で綴っていいでしょうか?

5/17/2023, 12:40:11 AM

ニューロマンサー


画面に表示された貴方の虚像を追っている
電子の海へとダイブする
貴方を探して
内在する虚構のどこかに貴方がいるのなら
私は追い続ける
ニューラルネットワークの光
貴方との記憶のメモリーを辿る
マトリックスの世界
胡蝶の夢
円環の廃墟
私は貴方に辿り着く
何もかもが新鮮になっていく…

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