たまには
今日、私は機嫌が良かった。
いつもなら気にかけず素通りするだろう、野良猫にエサを与えてやった。
薄汚れた毛並みの身体で、私にすり寄って来たので思わず避けてしまった。
私は、機嫌が良かったから親切になろうと思った。
明日になれば、すっかり元の性悪な性格に戻っているだろうから、今日くらい“イイヤツ”になろう。
友人に昼食をおごった。出来心だ。
たまには、イイヤツになるのも悪くない。
帰りに私は気分が良かったから酒を買って帰った。
機嫌が悪くても酒は飲むのだが、今日の私が飲む酒は一味違うだろう。
部屋に戻り、テレビをつける。
遠い異国で戦争が起きている。
気分が悪くなり、テレビを消し、酒を飲んだ。
結局いつもと何ら変わらない空虚な一日だった。
大好きな君に
僕が大好きだった君はもういない。
それがあまりにも非現実的で。
信じられなくて、冗談みたいで。
君がかつて好きだった曲。
Bob DylanのKnockin' on heaven's door。
世界一の詩人が作った世界一の曲。
ノック、ノック、天国のドアをノック。
口ずさむ。涙が頬を伝って、砂浜に染み込む。
大好きな君に、僕の歌を届けよう。
君は扉の向こうへと行ってしまった。
僕は煙突から流れる煙を見た。
これで最後だと知ったとき、僕の世界は壊れてしまった。
*;
壊れてしまえ。
たった1つの希望
昨日、私は父と口論になった。
そして酒に酔った父は私を殴り、蹴飛ばした。
私は鼓動に合わせて脈打つ痛みに悶えていた。
床に垂れた自身の血液の赤さと、生臭い鉄のような味を覚えている。
おかしいな。
私は昔を思い出す。
ほら、蘇ってきた。
私の頭を優しく撫でる父が。
私に絵本を読み聞かせてくれた父が。
私のためにお弁当を作ってくれた父が。
希望。
私が忘れない限り、今日も私の大好きな父が微笑みかけている。
欲望
私はあなたを渇望していた。
心の底から、あなたを求めていた。
多くの獣が群がるように、
様々な絵の具が混じり合うように、
あなたを想う感情が、
溶けて。
溶けて。
私の中に流れ込んできて。
疼いて。
息苦しくなって。
私は