NoName

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5/28/2023, 5:01:53 PM

 袖から覗くその白く細い腕に手を伸ばして。
 伝う汗のひとつひとつに舌を這わせて。
 吸い付くような軟い肌に幾つも赤い花を咲かせて。
 他の誰にも見せられないような、僕の独占欲に塗れた君にしたいと喉を鳴らしてしまうのは。

 きっと夏の暑さに浮かされたせい。

5/27/2023, 10:46:24 AM

 喩え死後に逝き着く先が、天国だろうと地獄だろうと。

 現世に生きる今だけが全て。

5/25/2023, 6:43:02 PM

 ずっと、降り止まなければ良い。

 鼻を突く雨の匂い。吸う息は湿気で重苦しい。顔に髪が張り付く。服が水を吸って重くなる。肌を伝い、生ぬるくなった雨特有の不快感に全身を包まれる。
 それでも、足取りは決して重くない。
 世界を満たす雨音は心地良く、耳障りなものを消し去ってくれる。視界を暈かし、見たくないものを遮ってくれる。

 私の声は届かなくて良い。
 雨音が消し去ってくれるから。
 私の傷に誰も気付かなくて良い。
 血も涙も、雨が流し去ってくれるから。
 私の醜悪な心に、誰も気付かなければ良い。

 流し落とせない私の醜さを覆い隠す為に、ずっと雨が止まなければ良い。

5/21/2023, 2:29:11 AM

 例えば、優しい人になりたい?
 例えば、賢い人になりたい?
 例えば、見目麗しい人になりたい?
 
 例え話をを並べ立てて、コラージュした理想像はまるで別々のピースを無理矢理組み上げて作ったパズルのようだ。
 遠目で見れば、それは理想を描いた肖像画かも知れない。
 けれど近くで見てしまえば、それはひとつひとつは意味を持たない歪な何かなのかも知れない。

 どれだけ歪になっても、貴方の思う理想の僕でいたいと己を律する反面。
 貴方の本心に触れるのが怖くて、決して僕の理想の貴方を崩して欲しくないと願うのは、
 美しい肖像に囚われた僕の、自分勝手なエゴなのだろうか。

5/19/2023, 10:10:55 AM

 明日突然、君に会えなくなったとして。
 きっと僕は、大して変わることもなく生きていけるのだろう。
 世界はどれだけ広くても有限で、僕らはその中で一度でも縁が交わったのだから。
 何処かでまたいずれ交わることもあるかも知れないと、君が居なくても立てる僕は楽観するのだろう。

 明日突然、君が死んだとして。
 きっと僕は、大して変わることもなく生きていけるのだろう。

 君という大きな欠落を埋められないまま、君の居ない世界を生きていくのだろう。

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